地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、松山・伊予・ 東温・松前・砥部の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

松山・伊予・ 東温・松前・砥部の地域情報サイト「まいぷれ」松山・伊予・東温・松前・砥部

伊予市パーフェクトガイド

伊予市ガイド vol.165【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第25回 寺に詣でる-(3)

ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪

 

第165回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第25回目です♪

 寺に詣でるシリーズ第3回目。

今回も前回に引き続き、栄養寺について述べていくことにする。

 前回は、参道を10mほどしか歩かず稿を終えたが、今回はもう少し寺の境内へと向かってみることにしよう。


龕部を持つ石塔

 参道を歩いていくと、第23回で紹介した山門に突き当たる。二階建ての四脚門。楼門と呼ぶべきだろうか。その山門の戸口の右側に注目していただきたい。石仏2体が安置されている。

 僕なんかは、このような石仏を目にすると、どうしても足が止まってしまう。仏像に関する細かな知識など、ろくすっぽ持っていないくせに、無性に気になり、細部を眺めたくなってしまうのだ。

 特に、手前の石塔が興味深い。愛媛県内の石仏・石塔を散々眺めてきたのだが、この形態の石塔は、ここ栄養寺以外では目にしたことがない。下から、反花座、蓮華座、龕部(仏像を納めるために設けた窪み)を持つ塔身、反花座、四面に円を刻んだ塔身といった順番で積みあがっていて、最上部に香炉を置いている。

 このような形態を何と呼ぶべきだろうか。非常に興味深いのだが、その答えは未だ見つかっていない。構成部材はどれも砂岩質で色味も似通っている。色味だけで言えば、底部の2パーツは、それより上部とは石材産地や造立時期が異なるようにも見える。ひょっとしたら、二つの石塔の残欠を組み合わせて一体化したものかもしれない。元々この形態であったかどうかは定かではないが、それを読み解ければ面白いんじゃなかろうか。

 龕部に収められている、いや、正確には塔身に彫り込まれている石仏は弥勒菩薩坐像のように見える。弥勒菩薩の仏像といえば、アルカイックスマイルを浮かべ、右足を左足の腿の上に組んで腰かけた形、いわゆる半跏思惟像が有名だが、この仏像は胡坐をかいたような、いわゆる坐像の形をとっている。

 頭に、何かしら帽子のようなものを被っている。これは宝冠と呼ぶべきものだろう。余計な装飾はまったくない。これらから察して、きっとこれは弥勒菩薩なんだとうねと納得することにする。

 次いで、石塔に刻まれた文字を読んでみることにする。「大乗妙典一字一石」「文化十癸酉八月吉日」「義覚謹書写」「世話人 當組中 十方檀施」と刻んでいるのがわかる。

 「大乗妙典一字一石」だから、いわゆる経塔といわれるものであろう。一般に「大乗妙典」は妙法蓮華経を指すといわれているが、栄養寺は浄土宗寺院。おそらく、無量寿経・観無量寿経・阿弥陀経から成る浄土三部経、「大乗三部妙典」の意を表すのだろう。「一字一石」は、経典の文字を一つの石に一字ずつ書写して埋納して供養することを表す。設置場所から見て、石塔の下に小石が埋納されているようには思えないのだが、ともかく、先祖や父母、あるいは村中で亡くなった方の菩提を弔う意味で設けられたものだろう。

 時代は文化十年(1813)だから、実に今から210年前。この石塔を眺めていると、江戸時代のこの町の人々の息吹が聞こえてきそうだ。

地蔵尊半跏像

 龕部を持つ石塔の背後には、地蔵尊坐像と思わしき石仏が置かれている。よくよく見ると、胡坐をかいておらず、左足を前に垂らし、蓮華座の上に腰かけている。半跏像だ。私の中では半跏像といえば弥勒菩薩というイメージが付き纏っているのだが、この石仏の御顔立ちはどう見ても地蔵菩薩。これも、あんまり目にした記憶がない形のものだ。「弥勒菩薩が坐像で、地蔵菩薩が半跏像ってどういうこっちゃ」と一人ツッコミを入れてみるが、誰も答えてくれそうにはない。

 この石仏も見るからに、何だか古めかしい。

 刻銘文を早速読んでみる。「大乗妙典一石一字」「延享二丑年八月……」「慈澗卓巌信……」と刻んでいる。

 「大乗妙典一石一字」と刻んでいるので、造立目的は上述の石塔と同じだ。ちなみに「一石」「一字」が上の石塔とは逆になっているが、一字一石塔は、「一石一字」と刻まれる例も多く、決して僕の書き間違いではないことをことわっておく。

 造立年は延享二年(1745)。先ほどの石塔より更に50年ほど遡る時代のものだ。

 龕部を持つ石塔の背後に配置され、細かい部分を観察しにくいのが残念だが、共に当時の民衆の祈りの形を今に伝えるもの。これからも大切にしていきたいものだ。

 

三部経一字一石塔

写真:三部経一字一石塔

 「一字一石」が出てきたので、その流れでもう一つ。実は参道の中ほど、山門に向かって右側に青石の自然石を用いた石塔が立てられている。

 刻銘は「三部経一字一石塔」「権田坊眠清」。

 「三部経」だから、先ほども触れたように「浄土三部経」を一字一石に書写して埋納したものであろう。実際に小石が埋納されているかどうかは、おいそれと掘り起こすことなんてできないので、確認しようがないのだが。

 「権田坊」という僧坊に「眠清」という方がいて、その方が造立したんだろうってことまではわかるが、情報が少なすぎて詳しいことはこれ以上わからない。

 造立年も刻んでいる様子はなく、いつの時代のものかも不明である。

宝篋印塔

 寄り道ばかりで、なかなか山門を潜れずにここまで来たが、ようやく山門を潜ることにする。

 山門を潜ってすぐ左側に石塔がある。

写真:宝篋印塔

 このような形式の石塔を宝篋印塔(ほうきょういんとう)という。

 形態は、方形の基台上に四角の塔身を据え、四隅に突起状の飾りを持つ方形の屋根(笠)を置き、その上に相輪・宝珠を立てた形の塔である。ここの宝篋印塔は、そのうちの相輪の部分が欠落しているが、それ以外は造立当時の形をそのまま良好に残しているように思える。

 宝篋印塔とは「宝篋印陀羅尼」という呪文を塔内に収めた供養塔だ。といっても「宝篋印陀羅尼」など耳慣れないお経の名前が出てきて、どんなものかはもっと勉強しなければわからない。それは、今後の勉強の課題として置いておくことにして、とにかく、この宝篋印塔というもの、一香一華を手向けて周りを右回りに回って礼拝すれば、その功徳により諸願が成就されるというありがたい塔なのだ。

 徳の高い人の墓塔として用いられることも多いのだが、ここに置かれているものは墓碑ではなさそうだ。塔身に刻まれた文字を読んでみると、「奉巡禮西国供養塔」「嘉永六癸丑歳五月」と刻んでいるのがわかる。台座には「講中安全」と刻まれている。

 江戸時代末の嘉永六年(1853)に、灘町の人々の期待を背負って代表者が西国三十三観音霊場を代参・巡礼した、それを記念した供養塔ということだろう。塔身の一面に造立目的らしきことも刻まれているのだが、風化摩滅が進んでいるせいもあって僕には読みとれない。

 伊予市誌によれば、栄養寺の観音堂には、西国三十三観音霊場の札所の写しの像を三十三体を安置しているらしいので、それに紐づけられる石塔なのかもしれない。

 この石塔も、当時の民衆の祈りの形を今に伝えるものとして、貴重な史料と成り得るだろう。


 ようやく、山門を潜り境内へと入ったものの、一つの石塔を取り上げただけで誌面を使い果たしてしまった。寺には気になるものが多すぎるのだから仕方ない。

 寺のことをまだまだ語り尽くせないままだ。次号ももう少しだけ「栄養寺」を舞台に話を書き綴りたいと思っている。

◆お店の詳細◆

店名:こたろう博物館

住所:愛媛県伊予市灘町60-3  

電話:(非公開、詳しくは店頭で)

営業時間:10:00~19:00

定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)

HP: http://kotaro-iseki.net

FB: https://facebook.com/kotaro-MLA

伊予市「こたろう博物館」館長いせきこたろうさんの【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】連載紹介♪

◆「伊予市ガイド vol.162 第24回 寺に詣でる-(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/86275

◆「伊予市ガイド vol.159 第23回 寺に詣でる-(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/85177

◆「伊予市ガイド vol.156 第22回 神社に詣でる-(6)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/84157

◆「伊予市ガイド vol.153 第21回 神社に詣でる-(5)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/82984

◆「伊予市ガイド vol.149 第20回 神社に詣でる-(4)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/82190

◆「伊予市ガイド vol.147 第19回 神社に詣でる-(3)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/81199

◆「伊予市ガイド vol.144 第18回 神社に詣でる-(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/80131

◆「伊予市ガイド vol.141 第17回 神社に詣でる-(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/79193

◆「伊予市ガイド vol.138 第16回 石造物を訪ねる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/78092

◆「伊予市ガイド vol.135 第15回 道を訪ねる-(5)~いにしえの道」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/77204

◆「伊予市ガイド vol.132 第14回 道を訪ねる-(4)~その他の道」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/76376

◆「伊予市ガイド vol.129 第13回 道を訪ねる-(3)~市道とか」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/75466

◆「伊予市ガイド vol.126 第12回 道を訪ねる-(2)~そして県道へ」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/74761

◆「伊予市ガイド vol.123 第11回 道を訪ねる-(1)~まずは国道を」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/73821

◆「伊予市ガイド vol.120 第10回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(4)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/72993

◆「伊予市ガイド vol.117 第9回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(3)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71897

◆「伊予市ガイド vol.114 第8回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71175

◆「伊予市ガイド vol.111 第7回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/70419

◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/69458

◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618

◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646

◆「伊予市ガイド vol.99   第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679

◆「伊予市ガイド vol.96   第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665

◆「伊予市ガイド vol.93   第1回 農村風景を眺める」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697

来週あたりついつい行きたくなる

伊予市情報特集ページ

公開した『伊予市パーフェクトガイド』

はこちらから

↓↓↓

伊予市パーフェクトガイド

イラスト:山内ひろみ

この記事が役に立った!という方はいいね!をお願いします♪

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

PICK UP 松山・伊予・東温・松前・砥部のお店 ~暮らし・相談~

  • 株式会社シコクビル

    株式会社シコクビル

    松山市居相4-16-4

    [ 建築物診断・耐震補強・環境改善・建築物外壁リフォーム ]
    資産価値評価向上のための外壁調査は「事前の診断」が重要!

  • おそうじ本舗松山古川店

    おそうじ本舗松山古川店

    松山市古川南1-20-25 今村ビル

    [ ハウスクリーニング・オフィスクリーニング ]
    女性スタッフ在籍! プロ品質のクリーニングで快適な生活を♪

  • K9Japan

    K9Japan

    松山市土居町741番地 ドッグガーデンでぐま内

    [ 犬のしつけ教室、犬の幼稚園、ペットホテル ]
    普通の家庭犬が「賢く」なる! 愛犬との絆を育むしつけ教室

  • 三井住友海上エイジェンシー・サービス 松山支店

    三井住友海上エイジェンシー・サービス 松山支店

    松山市南江戸3-2-30

    [ 生命保険、損害保険 ]
    プロフェッショナルの誇りと責任をもって地域に貢献します

  • 犬猫の宿・お手入れ処 かんじあん

    犬猫の宿・お手入れ処 かんじあん

    松山市岩崎町2-12-23 竹村ビル2階

    [ ペットホテル/トリミングサロン ]
    道後公園近く 和風のホテル・サロンでペットもリラックス

  • プライベートフォトサロンRulelu

    プライベートフォトサロンRulelu

    伊予郡松前町筒井960-4 グランフィールド松前庁舎前105号室

    [ 記念写真(スタジオ・出張)、証明写真、舞台撮影、動画撮影など ]
    日常を記念日に。気軽に頼れる、心に寄り添う小さなフォトサロン