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伊予市パーフェクトガイド

伊予市ガイド vol.93【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第1回 農村風景を眺める

ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪

第93回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんに連載をお願いすることになりました♪

まずは「こたろう博物館」と館長の「いせきこたろう」さんの紹介から始めます♪

「こたろう博物館」については伊予市ガイドvol.25で紹介しております♪

【伊予市の不思議のつまった新スポット】「こたろう博物館」

 

「いせきこたろう」さんの紹介♪

自称「愛媛研究家」。愛媛県内の隅々に足を運び、そこにあるモノ・コトをじっくり眺めながら、その由来や価値などを調査・研究しつつ、得られた情報をホームページ「こたろう博物学研究所」(http://kotaro-iseki.net 1996年開設)で公開する活動を続けている。

著書に「約149万人の媛語読本(創風社出版)」「道後平野から望む山の楽しみ方30章(アトラス出版)」など。

2020年4月に37年間の会社勤めを辞め、同年7月、伊予市灘町に私設博物館・図書館「こたろう博物館」を開館した。活動拠点を設けることで、愛媛研究活動により一層拍車をかけていこうとを目論んでいる

◆それでは記念すべき第1回「農村風景を眺める」始めます♪

 私のような都市部に住む一般庶民が「農村風景」といった場合に真っ先に頭の中に思い浮かべるのは、「棚田」であろう。

 

 田の間近から石垣を見上げる。どこから寄せ集めてきたのであろう、夥しい数の石を遠くから拾い集めて運搬し、おそらくは人力でコツコツと積み上げた石垣。人間の叡智、絶え間ない努力を積み重ねてきた先人たちの息吹が感じられるではないか。

 棚田の上端に立ち、見下ろしてみる。狭隘な土地に、何段ものテラスが水を称え、水面が空色を映している。太陽の移動と共に時々刻々と色合いを変えていく。時が止まったような山間の景観の中で、そこだけが時間の変化を映し出している。

 見る方向・角度に応じて多彩な顔を見せる棚田。眺める価値は十分にある。

 

 愛媛県内には、泉谷(内子町)、堂ノ坂(西予市)、奥内(松野町)など、環境庁の棚田百選に選定された棚田をはじめ、千町、下津池(以上、西条市)、河之内、井内(以上、東温市)、樫谷(大洲市)など、その美観で名高い棚田がたくさんあるが、さて、伊予市の場合はどうだろう。

  ひと頃前の観光パンフレットなどを見ると、中山地区の仁川登・影ノ浦や、双海地区の大久保本谷あたりが棚田スポットとして紹介されているが、現況はどうなっているのだろう。

 

 実際に足を運んでみると、十数年前と較べて景観はいくぶんか様変わりしている。棚田の何枚かは雑草が生い茂った休耕地になっていたり、栗・梅・桜などが植栽されたりしている。他の有名棚田と較べて、規模感や作付けの状況から見て、お世辞にも「絶景ですよ」などと紹介できなくなってきている。

  それでも、棚田が織りなす独特のノスタルジックな面持ちは未だなお残っている。ビューポイントさえ選べば、他の有名地と対抗できる風景を垣間見ることができる。

中山町仁川登の棚田

 この写真は、中山町出淵の仁川登の棚田であるが、中山川の支流を水源とした扇状の棚田といったスタイルであり、昔は至る所で目にすることができた典型的な農村景観である。田起こしをやめ雑草が茂っていたり、果樹を植栽した部分も多くなってはいるが、それでも風情は十分に残っている。

 

 中山地区の場合は、田圃も農家も、中山川やその支流沿いだけではなく、「こんな場所に?」といった山上の緩斜面に拓かれているケースが結構多く見られる。谷を挟んで向こう側の山々や棚田を取り巻く樹林との対比が、より棚田の存在を際立たせ、独特の景観を構成する。この点が面白い。

中山町上野中地区の棚田

 この写真は、観光パンフなどにはいっさい出てこない上野中地区の棚田だが、遠く離れた場所から見渡すと、石垣の曲線がなんとも美しい。立地的にまるで城郭跡のようにも見えてくる。言い過ぎかも知れないが、どことなく竹田城とかマチュピチュを想起させるような風景のようにも感じられる。

 水の流れも気になる。このような場所に、水をどこから引いているのだろうか。近くに沢があるのだろうか、はるか上方に築いたため池から水路を延ばしているのだろうか。いずれにせよ、棚田を築くことで、通常では水が流れるはずもない地形のこの土地に地下水を涵養したり、沢の水を分水することで大雨時に集中して流れる多量の水を適度に分散させるといったことも実現できているであろうことを考えさせてくれる。

 この何気ない風景の中は、色々と考えさせられる要素が多分に含まれているのだ。

 

 次に、視点を双海地区に移してみよう。

 

 双海の場合は、海に程近い場所に棚田が広がっている点が特徴的だ。田圃の水面と、その向こうに海面が連なる。この異なる水面のコラボレーション。とても印象的な風景だ。特に夕暮れ時、沈む夕日が田圃を赤く染める様子などは圧巻と言える。近くに河川らしい河川も見当たらないのに、このような水の織りなす風景が生まれるなんて…という驚きも生まれる。

 観光ガイドでは「本谷の棚田」の知名度が高いが、「本郷の田園風景」も捨てたものではない。どちらも、その夕暮れの絶景をカメラに収めるために多くのカメラマンが足を運んでいる。私なんかは、美しい写真を撮るテクニックを持ち合わせておらず、どうしても凡庸な写真になってしまうが歯痒くて仕方ない。

本郷の棚田

 このような、夕陽や海と棚田がコラボする風景は、旧伊予市の尾崎・本郡あたりでも堪能することができる。その気になれば、あなただけの観望スポットが伊予市内では幾つも見つかるはずだ。

 

 以上のように、伊予市内に存在する棚田には、見ておきたい所がまだまだ残っている。このような景観は一朝一夕に出来上がったものではない。長い年月をかけて、そこで農業を営む人々の創意工夫や地道な作業の丹念な繰り返しや積み重ねで今に繋がっているものである。それが故に、その人々の息吹みたいなものが重なって瞼に浮かび、より「美しく」感じるに違いない。それが荒れ果て、「ダメな風景」に変わったとしても、その背景には高齢化、過酷な労働、後継者不足、山間集落の荒廃といった根深い問題が潜んでいるわけで、外野である私なんかが「この景観を何とか保全しなきゃいけない」「行政は何やってんだ」などと軽口を叩くわけにはいかない。とりあえずは、ありのままの風景を享受し、「いま」と「未来」をただ見守っていく。力足らずかもしれないけれど、やれることはこのくらいなのだ。

 それでも「決して見過ごさない」、「しっかり目を向ける」ことだけは心掛け、それを貫いていきたい。そして、「美しい」かどうかだけを語るのではなく、その景観の中には、自然生態系の多様性とか、そこで仕事をする人々の民俗なり伝統文化などを考えさせてくれる多くの素材が隠されていることを見逃さないようにしたい。

 

 伊予市内の棚田の景観は、単なる印象だけで語り尽くせるようなものではなく、色々な輝きを包含していて、そこから多くのことを学びとることができる、とても味わい深いものなのだ。

◆お店の詳細◆

店名:こたろう博物館

住所:愛媛県伊予市灘町60-3  

電話:(非公開、詳しくは店頭で)

営業時間:10:00~19:00

定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)

HP: http://kotaro-iseki.net

FB: https://facebook.com/kotaro-MLA

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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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