伊予市パーフェクトガイド
ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪
第108回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第6回目です♪
前回まで、水の流れに注目して色々と書き進めてきたが、そろそろ別の視点での旅に切り替えていきたい。
今回は「地下を潜る路(みち)」を語ることにする。何ともまどろっこしい言い方だが、要はトンネル・隧道を見物しようじゃないかってことである。
トンネルなんてものは、そもそも、くねくねの山道を回避し移動時間を短縮するためのものであって、わざわざ立ち止まって眺めるような観光対象ではない。これが一般的な見解であろう。
しかし、このトンネルというものも、目を向けてみると意外と面白い。

まずは、双海町上灘の小網隧道。この隧道は国道378号沿いの旧道にある。一名「小網の通り穴」。国道脇にその名を記したプレートが取り付けられている。
伊予市内でトンネル見物をするならば、最初に訪れるべきはここであろう。
双海町誌によれば、明治初期に海岸線の岸壁を人力によって刳り貫いて造った約20mの通路であるという。この辺りは明神山の山塊が海岸からすぐの所で屹立しており、満潮や時化のときには通行困難であった海岸線の道。これをを安全で常時通行可能にした、しかも民間の力で成し遂げたという意味で画期的なことなのである。是非とも、記憶に留めておきたいトンネルである。
しかもレトロ感がたっぷり味わえる。坑口の上部や側面、坑道上部に赤レンガが積まれている。これだけで「おお!これぞ近代化遺産!」を歓喜の声を上げたくなる。
まさに「観光するトンネル」の代表格と言えよう。

中山町 肱川支流中山川の支川・大木谷堰堤
国道56号、犬寄峠の下を貫通した「犬寄トンネル」。このトンネルの完成時期は昭和45年(1970)と比較的新しい。
西予市の山間部に生まれ育った僕は、中学生に上がるまでは殆ど町外に出ることはなかった。それでも年一度くらいは、地区寄り合いで海水浴や物見遊山の小旅行をすることがあった。幼稚園児か小学校に入学して間もないくらいの頃だったか、松山に木下大サーカスがやってきて、これを見に行くことになった。松山という大都会、しかもサーカスという夢あふれる世界を見るのだから狂喜乱舞だ。
その頃は、まだトンネルは貫通していなかった。旧犬寄峠の山越えの道。松山までの道のりは幼心にも頗る長く感じた。この時、バス酔いというものを初めて知った。前の座席の背後に備わったポケットに収められている、あの「袋」のお世話になりそうになった。いや、お世話になった気もする…。
それがトンネルの開通により、大幅に改善された。小学4年生のときの松山への社会見学の時には、大洲のドライブイン道後でいったん休息した後はスイスイと苦労なく松山まで到着することができた。
そんな記憶からか、僕自身は犬寄トンネルに割と好印象を抱いている。
ところがである。このトンネル、不憫なことに、近年では心霊スポット的な扱いをされているじゃないか。見える人には見えるのかも知れないが、私には全く見えない。今までに一度も見たことがない。こうして写真を撮ると、変なモノが写り込んでしまうんじゃないかとドキドキもしてしまうのだが、今までに一度たりともそんなモノが写り込んだことはない。誰が何時ごろから言い始めた話だろうか。都市伝説的なものはその起源を追うすべもない。

国道56号以外にも犬寄トンネルがある。そう、JR予讃線、伊予大平と伊予中山間を貫通するトンネルだ。ずいぶん昔からあるような感覚に襲われるのだが、完成は昭和61年(1986)と割合新しい。予讃線の山回りルートの開通に合わせて開鑿された全長6,012mのトンネルは、四国最長の長さを誇る。
地図を眺めると、伊予大平の標高約90m地点から、中山町の標高約180m地点から直線状に緩やかに上っていくルートになっている。ちょうど、佐礼谷の竹之内地区あたりの地下を貫通している。トンネル上部に民家が並び、しかも県道255号や中山川がトンネル上を横切っているのだが、この道に車を走らせても、地下にトンネルが通っていることには全く意識が及ばない。そりゃそうだ。地下100mぐらいのところにトンネルがあるのだから。
このようなロケーションのトンネルというのは全国的にも珍しいのではなかろうか。天井川(土砂が堆積し、流路が一般住宅地よりも高い場所を流れるような川)の河床を貫通するトンネルならば、西条市の大明神川トンネル(JR壬生川~三芳間)などがある。これも全国的に珍しいと云われるが、犬寄トンネルだって、負けず劣らずの珍奇的価値があるように思えてくる。
加えて、伊予大平側・中山側のいずれの坑口も、トンネルに出入りする列車の姿を間近に、しかも安全に眺めることができるようになっていることが特徴的だ。「撮り鉄」と呼ばれる鉄道マニアでなくても、ついつい写真に撮りたくなるし、その様をぼぉーっとただ眺めていたくなる。ただ、列車は1時間に3~4便ぐらいしか走ってないし、通り過ぎるのは一瞬のことなので、列車を眺たいという方は、時刻表で通過予想時間を予めチェックしておいた方が良いだろう。
トンネルというのは、一般道路や鉄道のためだけに造られるとは限らない。こんなことを言うと、「えっ?他に何のためのトンネルがあるの?」と頭の中に疑問符が飛び交う方もおられよう。まあこの項のタイトルを見れば、答えは一目瞭然なのだが。そう。川が流れるトンネルだ。
川も、いわば一つの道である。水の流れるところのことを「流路」とか「河道」と呼んだりするように、これはれっきとした道路である。ただ、その開口部を通るものが、車や人ではなく、単に水であるという違いがあるだけだ。
そんな「河道トンネル」と呼ぶものが、この伊予市にはある。

ここで冷静になって考えてみるに、通るモノのために山とかを刳り貫くのがトンネルである。川は自然のものであり、昔も今も川の流れ自体は変わりない。川の上も跨いで通るモノが必要となったために、トンネルらしきものを継ぎ足したという方が表現としては正しい。ならば、機能的に見てこれは所謂
「橋」ではないか。ここのトンネルは、上部に鉄道の線路が敷かれている。だから、一種の「鉄橋」であるとも言える。「閉腹式コンクリート製アーチ橋」と呼んでも差し支えはなかろう。
「それじゃぁトンネルとは違うか…」
「やけど、ウチのオカンが言うには…」
などとあの漫才のように、議論が続いてしまいそうだ。
まぁ、細かいことはさておいて、形態的にはトンネルに似ているのだから、「トンネルの仲間」としておこう。
河道トンネルの場合、特徴的なのはその開口部の形状だ。高さ方向が横幅に較べ、やたら長く見える。車道トンネルなんかは縦横ほぼ同寸で「蒲鉾形」と形容できそうだが、この写真のような形をなんと表現できようか。広島の「原爆の子の像」の土台にも、どことなくフォルムが似ている。
おそらく、大水が出たときに、このトンネルのところが水流のネックとなって、水を堰き止めるようなことになってはならないから、開口部の面積をできるだけ大きくしようという設計面での配慮により、この形状になっているに違いない。川幅はみだりに広げられないから高さ方向で面積を稼ぐという考え方なのだろう。
前回も森川水系荒谷川の「テラス状河床」でも触れたが、当たり前のような顔をしてそこに存在する土木建造物には、実に色んな知恵が詰まっているのだ。「映える」ような華々しさは持たなくても、ちゃんと目を向けたくなってしまうじゃないか。

この写真は、伊予市内某所の河道トンネルである。このトンネルの特徴は、河道の脇に人が通行できる側道が備わっていることだ。「川の流れを眺めながらトンネルを潜り抜ける」…なんて、何とも風流じゃないか。とはいえ、コンクリートで塗り固められたところを歩くだけだから、あまり過剰な期待感は抱かないで欲しい。ただ非日常感を十分に味わえることだけは保証する。
これらの「河道トンネル」は伊予市内にある。しかし、ここでは具体的な場所を明かさないことにしておく。もし仮に興味を持たれたとしても、写真からロケーションを推察しながら探し訪ねてみていただきたい。答えが解っている旅よりも、答えを探す旅の方が圧倒的に楽しいはずだから。
◆お店の詳細◆
店名:こたろう博物館
住所:愛媛県伊予市灘町60-3
電話:(非公開、詳しくは店頭で)
営業時間:10:00~19:00
定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)
◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる]
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618
◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646
◆「伊予市ガイド vol.99 第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679
◆「伊予市ガイド vol.96 第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665
◆「伊予市ガイド vol.93 第1回 農村風景を眺める」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697
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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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