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伊予市パーフェクトガイド

伊予市ガイド vol.96【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる

ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪

第96回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第2回です♪

 前回、農村風景の一部として棚田について記したのだが、その中で、「水の流れも気になる」みたいなことを述べた。そう。水田には水が不可欠である。初夏の棚田が美しく見えるのは、水を張っているからこそだと言えよう。

こうなってくると、水田への水の供給源、これが気になる。大きな河川があれば、そこを堰き止めて、水路で導水するということになろうが、伊予市内にはそれほど大きな河川はない。代表的なところでいえば、中山町内を流れる中山川、伊予市内なら大谷川、双海町なら上灘川といったところか。初夏から秋にかけて田圃に水を安定供給するには、少々心許ない。

そうなると、必要なのはため池。自然とそういう帰結になってしまう。

 

伊予市にため池の多きこと

山上から平野部を見下ろす~ため池があちこちに見える。

「ため池」は伊予市を象徴する風景の一つと言えよう。谷上山とか、三谷・吾川・稲荷辺りの高速道路の脇から平野部を見下ろすと、あちこちにため池の姿が確認できる。この景色を見ると、ついつい、「伊予市のため池多いよね。絶対、県下一を誇るよね」なんて独り言を呟いてしまうのだが、調べてみると、意外にそうではないことを知らされる。

愛媛県のホームページ「えひめのため池」で公開しているデータベースから、各市町村のため池の数を拾ってみると、「今治市 828、松山市 668、西予市 292、西条市 192、宇和島市 181、伊予市 162」ということで、20市町村中6番目である。意外と数は少ない。

 もっともこれは、池堤の決壊による水害といったハザードを明確にするといった目的で抽出・管理しているデータであろうから、その市町村の中に存在するため池をすべて網羅しているわけではなさそうだ。水涸れして用を供さないもの、池堤崩壊・貯水漏出のリスクが極めて小さいもの、個人所有の小さな池などは、このデータベースからは漏れているであろう。しかしそれを勘案したとしても、今治市・松山市の数には到底及びそうにない。

 それでも、この162ヶ所のため池の大半は、旧伊予市の範囲内にあるのだから、旧伊予市の面積の中で100数十ヶ所と考えれば、かなり密集している地域だと言えそうだ。だからこそ、ため池が象徴的な風景に思えるのだ。

 さて、これらのため池は物見遊山の対象になるのだろうか。確かに、水を湛えた称えた静かな場所。じっと佇めば、癒される感じにはなる。のんびりとした時間を過ごすには悪くない。しかし、余りにも単調といえば単調。どこのため池を訪れても、ぐるっと取り囲んだ池堤の中に水を湛えている、ただそれだけである。これを言っちゃ元も子もないのだが。

 棚田と同様、夕暮れ時に訪れれば夕陽のリフレクションといった「絶景」に出くわし満足感を覚えることもあるのだが、池と夕陽の組み合わせだけでは、どうにもインパクトに欠ける。

 

大谷池があるじゃないか

 伊予市に数あるため池の中でも圧倒的に知名度が高いのは大谷池であろう。何といっても、農林水産省の「ため池100選」に選出されている。日本全国で20万以上もあるため池の中で、堂々100選入りしているのだから、すごいではないか。

 この池は、平野部のものとは異なり、三方を山が取り囲んでいる。そう、大谷池はため池とは呼んでいるものの、厳密に言えばダムなのだ。土を台形状に盛って堰堤を築き、幾つかの谷の水を堰き止めて貯水する形の「アースダム」なのである。だから堰堤以外の部分は自然の味がたっぷり残っているのだ。

野鳥たちもそのことを知っているかのように、多種多数この池に集まってくる。バードウォッチングにも好適な場所になっている。

池の奥の谷一帯はえひめ森林公園が設けられていて、子供たちと共にアスレチックをしたり、キャンプをしたりと、ファミリー向けの場所にもなっている。自然景観に富み、また遊歩道などの整備も整っていて、県民の憩いの場と呼ぶに相応しいため池なのだ。

 

 さぞかし昔からあったように思えるこの大谷池。実は歴史はそれほど古くない。南伊予村(現在の伊予市東部一帯)の村長であった武智惣五郎が安定した水源の確保を意図して、大正13年(1924)に発案。様々な紆余曲折を経ながら、終戦直前の昭和20年(1945)3月に完成したものだ。

 

 戦時中の困難や、建設途中での大雨による池堤決壊など、並々ならぬ苦労もあったようだが、彼は不屈の精神と実行力で難工事をやり遂げた。今の大谷池の姿があるのは彼のおかげであり、もっと顕彰すべき人物であると思うし、仔細にその事績を記したいところだが、ここでは紙面の都合もあるので、これぐらいに止めておこう。

大谷池以外にも訪ねておきたいため池がいくつかある

 旧伊予市が制定した「伊予市八景」の一つに選定された三秋大池。背後に聳える明神山の姿を水面に映した風景、池の傍を走り抜ける列車の姿など、他のため池とは異なる趣に満ち溢れている。江戸時代の築造ということであり、歴史面から掘り下げてみるのも面白いだろう。

 歴史面といえば、双海町上灘の「おきよ池」も要注目である。犬寄峠の脇にあるため池だが、「おきよ」という人名がついている点が興味深い。この人物は大洲藩主の加藤氏の元で乳母を務めたといい、藩主はその功績を讃え、褒賞としておきよが願う「村民のためのため池」を築造したと伝える。

 

 中山町の秦皇山中腹にある長曽池も魅力的なため池だ。池の周りの散策路は歩いていて実に気持ちが良い。一見、自然池のようにも見えるこの池だが、山間部の田畑の水源確保を図るべく、泉田仲藤が中心となって昭和27~30年に建造したという背景を頭の片隅に入れておけば、見え方が変わってくるはずだ。

 

名前も無さそうなため池を巡るのは楽しいことなのか

 例えばこの写真をご覧になって、この池がどこの何池かわかる人はいるだろうか。お近くにお住まいの方ならば「あ!あの池ね!」って相槌を打ってくれるかもしれない。しかし、何という名前かを問うた時に、正確にその名前を口にして下さる方はどれほどいるだろう。

 そう。ため池というものは、大抵の場合、農業用水を貯えるのが目的であって、一般の人に見てもらう対象ではない。名前も、その用水を利用したり、維持管理したりする利害関係者が知っていれば事足りるわけで、ほとんどのため池には池名を表示する石標も設けられていない。

 池からさほど離れなくても、池全体の写真を撮ることができる、そんな小振りな池。奥側にこんもりとした林はあるが、自然味あふれるとは到底言えない。池中や池畔に希少な植物が自生しているわけでもない。水面にはヒシが蔓延っていて、水面が美しいってわけでもない。これといった特徴は全く見られない。

 こんなため池を、いったい誰が好き好んで見学するというのか。

 それでも僕はその池を眺めたいし、それに名前があるのならば、それを知りたい。特筆すべき事がなくとも、現地を見分したい性分なのである。

 さきほどの写真は「ジブン池」という名の池である。いったいどんな字が当てられるのだろう。単純に音韻から推測すれば「自分池」っぽいが、固有名詞になりそうな字面ではない。市のハザードマップ等で確認すると「地分池」と書かれている。だがこの辺りに「地分」という地名は見えない。

 名前の由来が気になって仕方なくなる。実際に現地に出向き、池を眺めながら考える。水利組合とか大勢の農家が絡んできそうな大規模な池ではない。ほぼ個人が所有・利用しているであろうと思えるサイズ。やっぱり、これは「自分池」が元来の表記なのではなかろうか。

 江戸時代に存在したあるいは築造されたため池は、大別すると「御分池」と「自分池」に分けることができる。「御分池」は藩の管理下にあるもの、「自分池」は個人所有のものである。「自分池」は、大抵の場合、その所有者の苗字を冠した名前になっているのだが、このジブン池は、所有者が少数であるが複数人いたため、総称としての「自分池」がそのまま固有の名前として定着してしまったのではないか。そう考えると、この池名が持つ歴史的な価値が大きいと思え、愛おしくなってしまう。

 

 こんな風に、何の変哲もないため池であっても、意外と奥深い世界が待ち構えているものである。名前が一つわかるだけでも、現地の風景の見え方が、随分と変わってくるものなのだ。

 

 こんな、他愛もない、知っていても得しないようなことへの気付きが快感となる。これが僕の伊予市探訪の原動力となっている。

◆お店の詳細◆

店名:こたろう博物館

住所:愛媛県伊予市灘町60-3  

電話:(非公開、詳しくは店頭で)

営業時間:10:00~19:00

定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)

HP: http://kotaro-iseki.net

FB: https://facebook.com/kotaro-MLA

伊予市「こたろう博物館」館長いせきこたろうさんの【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】連載紹介♪

●「伊予市ガイド vol.93 第1回 農村風景を眺める」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697

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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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