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伊予市パーフェクトガイド

伊予市ガイド vol.147【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第19回 神社に詣でる-(3)

ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪

第147回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第19回目です♪

 「伊予市でおすすめしたい神社はどこ?」と尋ねられることがある。その質問を受けたとき、「気の利いた回答ができなければ愛媛研究家の名折れだ」と一瞬だけ躍起になるのだが、「私の主観でベストなものを選んだところで、必ずしも質問者のお好みに合うとは限らないよなぁ」と途端に気分が萎えてしまう。

 そもそも、私の神社の巡り方なんてものは、万人に受け入れられるスタイルではない。この「神社に詣でる」シリーズを読んでいただいている方なら、「そりゃそうだわね」と納得して下さるだろう。

 このシリーズの1回目でもざっと記した通り、神社詣には様々な目的があるわけで、質問者の御意向をある程度伺わなければ、気の利いた候補地を選ぶことなんてできるわけがない。

 「綺麗」「珍しい」「神々しい」「為になる」…どんな讃美の言葉も、個人の主観で重みがかなり変わってくる。質問者の嗜好がわからなければ、何を基準にチョイスしたら良いのか見当がつかない。

 無難な回答を選ぶならば、「伊予市稲荷の正一位稲荷神社ですかねぇ」という台詞を真っ先に使うだろう。前回お話ししたように、歴史・景観・境内に置かれるもの…どれをとっても語る内容が山ほどあるのだから。

 御朱印や御守りを欲しがっている人には、宮司が常在していて、きっちり対応されている神社をお勧めしなけりゃならない。ともなれば、伊予市内でいえばやはり正一位稲荷神社ぐらいの選択肢しかなくなってしまう。

 「万人ウケする神社」「インスタ映えする神社」なんてことを求められると、途端に回答に行き詰ってしまう。「万人ウケする神社なら誰もがお勧めするだろうし、もう既に観光パンフでバンバン紹介されてるはずですよ」とか「インスタ映えする神社なら、もう既にSNSを賑わしてて、たくさんの人が足を運んでますよ」という台詞を口走りそうになる。どうにも天邪鬼的な性格なもので。

高岸三島神社(双海町)

2022年、大人の女性の旅をナビゲートする旅雑誌「旅色」の伊予市版が刊行され、北乃きいをナビゲータとして伊予市内の観光スポットを紹介しているのだが、高岸三島神社はそれにも取り上げられており、映えスポットとして有名な神社の一つと言えるだろう。

推しは「亀の狛犬」。参道入口とか拝殿前には、普通は獅子・狛犬が置かれるのだが、ここの神社にはなぜだか「亀の狛犬」が置かれている。正式名称が定かでなく「狛亀」と呼ぶ人もいる。私もホームページでは便宜上「亀の狛犬」という名称で紹介しているが、正直なところこの呼称は不適切だなと思っている。

 稲荷神社に置かれるものを「狐の狛犬」と呼ぶ人もいるが、これもおかしな呼び方である。境内に置かれるものを総称して「狛犬」と呼ぶ傾向があったとしても、狛犬は狛犬という動物(?)であって、亀や狐と同列なのだから。だから、稲荷神社の狐のことは極力「石狐」・「狐像」とか「眷属」(神使)とか呼ぶことにしている。

 となれば、この三島神社のものを何と呼ぶべきか。「石亀」が妥当か。いやいや、イシガメという種類の亀がいるのだから紛らわしくって仕方ない。「亀像」くらいがちょうど良いか。三島神社は大山祇神を祀るのだから、亀を「眷属」と呼ぶのはおかしいし。そもそも、この神社が何故亀像を拝殿前に置いているのかが不思議でたまらない。

 神社由来によると、「神亀改元春正月、亀の背に金幣を輝かし浮遊して渚に走り上がり森の中に入る。万民この地に社を建てて祀る」ということだ。創建が神亀元年ということなので、元号に因んで大山祇神の勧請地を亀が導いたという話が出来上がったのかも知れない。

 双海町誌によれば、昔から吉事凶事のどちらがあるとき必ず付近で大きな亀が目撃された。安永5年(1776)神社が全焼した大火事の際には、海岸近くまで大亀が来て社殿が焼け落ちるのを悲しげに眺めていたというし、明治17年(1884)に神社が新しい神主を迎えたときには大亀が海岸まであがって来たという。こうしたことから、村人たちは大亀を眷属だと信じ、神社の建っている一帯を亀の森と呼ぶようになったらしい。

 この亀像は安政4年(1857)の記銘があるので、時期的に見て、大亀の伝説に基づいて建立されたと見てもおかしくない。

 しかし、よくよくこの像を眺めると、「これ、本当に亀なのか?」との疑念を覚える。確かに甲羅を背負っているが、顔つきは獅子に近い。しっぽも三つに割れている。

 この亀、亀は亀でも「霊亀」というやつである。この像形は、神社とかでは滅多に見かけないが、寺や墓地では時たま目にすることがある。墓石の台座に、この亀が据えられ、しっかりと墓石を支えているのが一般的なスタイルだ。このようなものを亀趺台座(きふだいざ)と呼ぶ。広島あたりの社寺に行けば、置かれているのが割と目に留まる。

 例えば、この写真は尾道市の某神社に置かれている手水鉢の吐水口だ。一般的に、社寺に置かれる手水鉢の吐水口は龍をあしらっていることが多いのだが、この神社のものは霊亀になっている。私は愛媛ではまだこの類型を見たことがない。

 実は高岸三島神社の亀像は、尾道の石工が制作している。「尾道の石造物と石工」という冊子には、道草喜右衛門によるものだと記載されている。

そして、狛亀でも霊亀でもなく、蛟(みづち)だと説明している。蛇に似て、四足があるという想像上の動物。というか妖怪。こうなると、何が何だかよくわからなくなってくる。しかし容姿が「亀に似ている」という点は疑いなく、伝説も転がっているんだから、やはり亀への畏怖に基づいて建立されたものと考えておきたい。

 

 とまあ、こんな感じで、一つの神社でも、そして亀の石造物一つを取り上げて語り尽くせないような話がいっぱいあるわけで、ある特定の神社をお勧めするなんてことは至難の業なのである。

厳島神社(中山町)

 私の場合、蘊蓄を拾い集めるための神社巡りが主体となるのだが、いつもいつも小難しいことばかり考えながら巡るわけでもない。感性に身を任せてふらりと訪れ、ふと目にした神々しい光景に感嘆する、そんな神社への旅だってある。

 上の写真は、中山町泉町一丁目に鎮座する厳島神社の本殿だ。この神社の創建がいつかは定かではない。中山町誌でも、資料がないため判明しないとしたうえで、明治初期の泉町の絵地図に臨泉学校という学校は載っているが厳島神社は見当たらないので、比較的歴史が浅いかもしれないとしている。

 歴史の古さはどうあれ、この祭祀形態がたまらなく良い感じではないか。本殿の周りが堀というか池になっている神社は、伊予市内ではここ以外で目にすることはない。

 厳島神社はご存じの通り、広島県の宮島に鎮座する神社で、ユネスコの世界文化遺産に登録されている神社だ。海の中に聳え立つ朱色の両部鳥居のイメージが強すぎて、厳島神社は海の近くに祀られる神社という錯覚を覚えてしまう。だから、ここの厳島神社は山の中で、本殿が池の中に置かれているのが奇妙に思えて、妙に惹かれてしまうのである。

 だけど、「厳島神社は海の近く」なんてことは先入観に過ぎない。久万高原町とか松山市恩地町など、山間部に勧請されるケースはおおいにある。

だが、池の中に本殿が置かれるケースはそうそうない。そう言いつつも、「そうそうない」と言い切るにはちょっとだけ語弊がある。

 同じく中山町の大矢、秦皇山の中腹の集落には、明神池と称するため池があり、そこに弁天宮が祀られているのだ。

 「弁天宮?厳島神社と違うじゃないか!」とツッコミを入れられるかも知れないが、厳島神社の祭神である市杵島姫は七福神のメンバーの一人・弁才天とが神仏習合した民間信仰が多々見られるのだ。

 弁才天は仏教神であるから、寺の境内に弁天池と称する池が設けられ、そこに祀られるケースも多い。この近隣でいえば、池と弁天宮の取り合わせは、松山市高井町の杖ノ淵公園、松山市久保田町の安楽寺、砥部町の理正院などで目にすることができる。

 

 「池と社殿の取り合わせ」という祭祀形態に惹かれただけの話も、深堀りすれば果てしなく色んな事柄がリンクし、知的好奇心を掻き立てるものとなる。

 

 どこの神社にも良いものがたくさん転がっている。「どこが良い」「何が良い」といった話じゃない。「何をどう見るか」、「何を面白がるか」が重要だ。それを決めるのは貴方次第。他人に推挙されて足を運び、他人のナビゲートを受けながら見聞するのも決して悪くないが、自分の中で「なぜなぜ」を繰り返しながらバックグラウンドを掘り下げていくと、旅の楽しみが倍増するはずだ。ガイドに頼らず、問題の提起から解決までを自分自身でこなしていく、そんな旅をぜひ創出していただきたい。

◆お店の詳細◆

店名:こたろう博物館

住所:愛媛県伊予市灘町60-3  

電話:(非公開、詳しくは店頭で)

営業時間:10:00~19:00

定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)

HP: http://kotaro-iseki.net

FB: https://facebook.com/kotaro-MLA

伊予市「こたろう博物館」館長いせきこたろうさんの【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】連載紹介♪

◆「伊予市ガイド vol.144 第18回 神社に詣でる-(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/80131

◆「伊予市ガイド vol.141 第17回 神社に詣でる-(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/79193

◆「伊予市ガイド vol.138 第16回 石造物を訪ねる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/78092

◆「伊予市ガイド vol.135 第15回 道を訪ねる-(5)~いにしえの道」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/77204

◆「伊予市ガイド vol.132 第14回 道を訪ねる-(4)~その他の道」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/76376

◆「伊予市ガイド vol.129 第13回 道を訪ねる-(3)~市道とか」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/75466

◆「伊予市ガイド vol.126 第12回 道を訪ねる-(2)~そして県道へ」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/74761

◆「伊予市ガイド vol.123 第11回 道を訪ねる-(1)~まずは国道を」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/73821

◆「伊予市ガイド vol.120 第10回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(4)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/72993

◆「伊予市ガイド vol.117 第9回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(3)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71897

◆「伊予市ガイド vol.114 第8回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71175

◆「伊予市ガイド vol.111 第7回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/70419

◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/69458

◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618

◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646

◆「伊予市ガイド vol.99   第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679

◆「伊予市ガイド vol.96   第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665

◆「伊予市ガイド vol.93   第1回 農村風景を眺める」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697

来週あたりついつい行きたくなる

伊予市情報特集ページ

公開した『伊予市パーフェクトガイド』

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伊予市パーフェクトガイド

イラスト:山内ひろみ

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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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