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伊予市パーフェクトガイド

伊予市ガイド vol.144【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第18回 神社に詣でる-(2)

ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪

第144回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第18回目です♪

 前回の続きで、正一位伊豫稲荷神社を巡り、いろいろな物を眺めていくことにしよう。

 

どんなものがあるのか

 前回は、一の鳥居・三の鳥居(両部鳥居)・楼門について少しお話しした。そして、楼門から石段を上った境内地に、拝殿・神楽殿・本殿などの社殿、更に絵馬殿・宝物館などの建物、そしてノダフジの古木や、灯籠・狛犬・記念碑などの多くの奉納物が置かれていることに触れた。

 今回は、神社で目にすることができるものを、より具体的に挙げてみよう。とはいえ、社殿内部については何せ神様の鎮座する聖域。おいそれと足を踏み入れるわけにはいかない。神主にことわりを入れ、許可を得た上で入らせてもらうべきであることを心得なければならない。

建造物

 神社建築物は大きく分けると、本殿(神の鎮座する場所)、拝殿(神を礼拝する場所)の2つが存在する。小さなお宮になると、これらが一体化した(「本殿部のみを置いた」というほうが正しいかも知れない)と、いわゆる小祠といったものになる。

 伊豫稲荷神社のような大きな神社の場合は、本殿・拝殿に加え、神楽殿、神饌所など付帯的な建築物が加わり、更に社務所なども備わってくる。

建築物については、先ほども述べたように、勝手に中に入ってゴソゴソするわけにはいかない。神主や氏子の皆さんの心象を損ねるような拝見の仕方は慎むべきだ。境内地より外観をひっそりと拝見させていただくこと心掛けたい。

建築物を眺める場合だが、まず困るのは建築部位の名前がよくわからないことだ。屋根とか柱とか、漠然とした概念はわかる。だが、屋根一つとっても、切妻、寄棟、入母屋といった形態の違いはあるし、屋根瓦も、巴瓦、雁振瓦、のし瓦、桟瓦、けらば瓦、…と果てしない部位名称が存在する。神社建築ともなれば、神明造、大社造、流造、住吉造、八幡造、春日造などの形態の違いも覚えなくてはならないし、千木・鰹木といった神社特有の部位も押さえなければならない。いやはや大変だ。建築家の皆さんには、ほんとうに感服する。

私のような門外漢は、「建築意匠」、各建築部位に施された彫刻等の部分を眺め楽しむしかない。美術的鑑賞というか、見た目の印象を語るぐらいが関の山である。彫り物の作者などへの造詣を深めたいところだ。

 なお、社殿内にある美術的鑑賞の対象として「絵馬」「奉納額」も見どころの一つしして挙げられるのだが、何度も言うが、社殿の中に勝手にズケズケと入らず、きちんと許可を得て拝見させてもらうことを忘れずに。

宝物館内のもの

 宝物館内には、武具(甲冑、刀剣等)、陶磁器、絵画などが収蔵されているが、これらが公開されるのは、祭礼などに併せて年に数回に限られる。これらについては、文化財調査報告書など、文献を紐解いて楽しむしかない。よって、ここでは詳しくは述べない。まあ、どれも専門性が高いマニアックな世界なので、私には詳しく語るだけの度量もないのだが。

石造物

 あまり遠慮することなく観察できる身近な文化財として石造物がある。参拝時には、これに目を向けてみてはいかがだろうか。

 伊豫稲荷神社には、以下に挙げるような、多種多様な石造物が存在する。

1.  鳥居

2.  社号碑(神名石)

3.  注連石

4.  幟立石

5.  常夜燈/灯籠

6.  狛犬

7.  狐像

8.  水盤(手水石)

9.  用度石

10.用水桶

11.敷石・葛石等(寄進芳名碑を含む)

12.玉垣/寄附者芳名碑

13.記念碑、顕彰碑

14.文学碑(句碑)

15.道標等

16.供養塔・墓碑等

17.伝説の石

 

 これらが参道、境内地のどこに存在するのかを表したのが以下の図である。

石造物~参道にあるもの

石造物~境内にあるもの

石造物の眺め方

 「石に刻んだ文字は未来永劫消えることがなく、代々語り継がれていくはずだ」。こんな錯覚に陥りがちだが、必ずしもそうではない。石であっても長年雨風に曝されれば、だんだんと摩耗・剥離など劣化が進み、やがては文字が読み取れなくなってしまう。また、苔や地衣類の生着により、刻文が覆われてしまって判読不可能な状態に陥ったりもする。

だからこそ、「読めるうちに読む」「拾えるうちに拾って記録に残す」のだ。

 

 文字を読むという作業を実際に行ってみると、いろんなことが見えてくる。

 まず、刻んでいる文字。これには、学校で習わなかったような文字がふんだんに出現する。例えば、神社にモノを献上することを表す「奉献」という言葉一つとっても、

 など、様々な形の文字で表現される。これらは、異体字と呼ばれるものだ。文字によっては、これに、偏(へん)と旁(つくり)が入れ替わるパターンも出てくる。左右がひっくり返ったり、上下が入れ替わったり。いやはや大変だ。

 そして、書体も多種多様で、明朝体、楷書体ならまだどうにか翻刻できそうだが、草書体などになると、学のない私なんかは途端にお手上げになってしまう。数をこなしていくうちにそれなりに、なんとなく、ある程度は読み取ることができてくるような錯覚を覚えるが、何年経っても満足いくレベルには到らない。

 最近ではAI技術を駆使した判読アプリなども出てきているが、まだまだ実用的なレベルとは言い難い。やはり、ズボラではいけない。機械に頼らず、己の読解力を磨くことに努めるしかない。

 建立時期も厄介だ。西暦年で記載されていることは殆どなく、元号を読み取るのだが、先ほどの異体字の問題、そして風化摩滅による読取困難の問題で、この作業も割と難航を極める。大抵は干支(十干十二支の組み合わせで60通り)が記載されているのでこれとの組み合わせで判断していくしかない。

 製作者(石工)を追うのも面白い。地場の石工か、それとも他所からの出稼ぎか。尾道の石工集団については、日本遺産調査報告書「尾道の石造物と石工」が刊行されており、この内容を参照しながらある程度は追跡できるが、地場の場合は、「松前」「郡中」などの石工の存在を確認できるものの、何せ明確に記された文献がほとんど存在しないので厄介だ。石造物調査を丹念に進め、データを積み重ねていくしかない。

 奉納者・寄進者・世話人なども調べてみると色々と面白い。大抵は氏子の名前なのだが、神社総代を務めた人物や当時の地元の名士と呼ばれる人々のお名前がわかり、その人々の交遊関係なども垣間見える。また、当時地元ではどのような店や会社が繁栄していたのかといった「まちの様子」も伺い知ることができる。

 

 このような話を続けてばかりいると、際限なく書き連ねてしまい、終わりが全く見えなくなってくるので、伊豫稲荷神社に存在する石造物を眺める場合に注目すべき点を箇条書きで紹介しておくことにしたい。なお各項目に振っている番号は石造物分類番号である。所々数字が飛んでしまっているが、番号の振り間違いでも、内容が脱落しているわけでもない。その点、ご留意を。

 

〇 鳥居

・鳥居の数:一の鳥居、二の鳥居、三の鳥居、裏参道の鳥居、その他残欠数基、境内末社の鳥居(千本鳥居)

・鳥居の形式:明神鳥居、両部鳥居

・神名額:額束の有無、額の題字の揮毫者

・鳥居の中で特に注目したいのは、三の鳥居。伊豫稲荷神社の境内地入口、楼門前の木製・朱塗の鳥居で、二本の親柱の前後に「わくざし」(枠控えの柱)を四本とりつけた、「両部鳥居」という形式。この近辺ではあまり目しない形。

 

〇 社号碑(神名石)

・神社名を記した石碑。

・一の鳥居脇のものは、明治の能書家・巌谷修(巌谷一六)の書。

 

〇 注連石(注連柱)

・一般的には高さ2~3m、主に角柱の石柱で、鳥居や拝殿の前に建てられる。

・その名の通り、注連縄を張るためのもの。

・境内入口のものは、源太石(双海町上灘、岡地区産の黒雲母安山岩)製。

・石工は河野固一郎で、この石工の名は伊予神社の常夜燈、手間天神社記念碑(ともに伊予市上野)などでも見られる。

 

〇 幟立石

・その名の通り、祭礼の際に幟を立てるとき、それを固定するためのもの。

・刻字は少なく、寄進者あるいは世話人の名しか刻まれない場合がほとんど。

 

〇 常夜燈/灯籠

・神前型灯籠、蘭渓灯籠、春日灯籠、近代デザインの灯籠などが見られる。

・建立目的は、参道/街道(金毘羅参詣道)の照明、境内照明

・石工は、庵治(香川県高松市)の石工、伊予市の石工(今岡某)

 

〇 狛犬(厳密には獅子・狛犬の2つの形態あり)

・稲荷神社の場合、境内入口や祠前に眷属の狐像が置かれるのが一般的。

・他の神社で見かけるのと同様の狛犬も数基置かれている。

・材質は、花崗岩、瓦、木製など多様。

・奉納者・世話人に、三島陶器(金岡焼)の開祖・金岡音右衛門や、山崎屋・邑崎屋・岡本屋・八木屋など三島町の商家の屋号などが見える。

 

〇 狐像

・稲荷神社の眷属とされる狐像が多く祀られている。

・尾道石工の作品もあり。

・奉納者・世話人に、郡中の俳人・「仲田和助(蓼村)」が見えるものもある。

 

〇 水盤(手水石)

・楼門脇の手水舎に置かれている。

・水盤の四隅を蛙(ビキ、ガマ)が支えているのが特徴的。

〇 玉垣/寄附者芳名碑

・境内地を取り囲むように、多くの寄進者名を刻んだ玉垣が並ぶ。

・本殿裏側においては、奥に一列、明治~昭和初期のものが立ち並んでいる。寄進者には当時の地域経済を支えた錚錚たる面々の名前が見え、文化資料としての価値があるように思える。

 

〇 記念碑、顕彰碑

・題字揮毫者(碑正面に刻まれた題字の原本を書した人)に烏谷章、川島義之などの名前が見える。

・撰文者(碑の裏面に刻まれた、顕彰する人の事跡や業績を賞賛する文章を作った人)に、菅菊太郎、竹葉秀雄などの名前が見える。

・伊藤五百亀作の藤谷隆太郎銅像がある。

〇 道標等

・「右こんぴら道」~金毘羅参詣道がこの場所を通っていたことを示す。(こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』、第15回を参照)

 

〇 供養塔・墓碑等

・その他、参道や裏山などに、数基の石造物が存在するが、神社に直接関係するものかどうかははっきりしない。どれも仏教的色彩を持つものであるが、神仏習合の時代もあるのだから、全く無関係とは言い切れない。

 

〇 伝説の石

・亀石:安産祈願の対象。妊婦が撫でたり、腰掛けたりするという。

・夜泣き石:親子の石。灘町の宮内家にあった石が夜中に泣き声をあげるというので、親石のあった稲荷神社に移設されたという。

 

以上、伊豫稲荷神社に存在する石造物についての概要を紹介したが、くれぐれも拝観にあたっては、不用意に触らない、傷つけないなど、最低限のマナーを守っていただきたい。

 

 

最期に告知を一つだけ。

11月24日(金)18:30~20:30、ミュゼ灘屋(伊予市灘町123)において、こたろう博物館OMOSHIRO講座(第6回)「伊豫稲荷神社の眺め方~石造物を中心に~」、[仮題]の開催を予定している。講演内容は、前回紹介した「伊豫稲荷神社文化財調査報告書」の概説、そして今回取り上げた石造物関連のトピックスを幾らか詳らかにお話ししようと思っているので、お時間あらばご参加願いたい。

詳しくは、ミュゼ灘屋のFacebook(https://www.facebook.com/museenadaya/)等でご確認を。

 

◆お店の詳細◆

店名:こたろう博物館

住所:愛媛県伊予市灘町60-3  

電話:(非公開、詳しくは店頭で)

営業時間:10:00~19:00

定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)

HP: http://kotaro-iseki.net

FB: https://facebook.com/kotaro-MLA

伊予市「こたろう博物館」館長いせきこたろうさんの【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】連載紹介♪

◆「伊予市ガイド vol.138 第17回 石造物を訪ねる」

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◆「伊予市ガイド vol.138 第16回 石造物を訪ねる」

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◆「伊予市ガイド vol.135 第15回 道を訪ねる-(5)~いにしえの道」

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◆「伊予市ガイド vol.132 第14回 道を訪ねる-(4)~その他の道」

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◆「伊予市ガイド vol.129 第13回 道を訪ねる-(3)~市道とか」

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◆「伊予市ガイド vol.126 第12回 道を訪ねる-(2)~そして県道へ」

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◆「伊予市ガイド vol.123 第11回 道を訪ねる-(1)~まずは国道を」

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◆「伊予市ガイド vol.120 第10回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(4)」

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◆「伊予市ガイド vol.117 第9回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(3)」

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◆「伊予市ガイド vol.114 第8回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(2)」

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◆「伊予市ガイド vol.111 第7回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)」

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◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路」

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◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる」

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◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」

https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646

◆「伊予市ガイド vol.99   第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」

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◆「伊予市ガイド vol.96   第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」

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◆「伊予市ガイド vol.93   第1回 農村風景を眺める」

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来週あたりついつい行きたくなる

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イラスト:山内ひろみ

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