伊予市パーフェクトガイド
ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪
第171回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第27回目です♪
栄養寺は、灘町開拓期に中村にあった明音寺を移設し、町の開拓者である宮内家の菩提寺としたということで、宮内清兵衛、九右衛門(清兵衛の兄)、庄左衛門(宮内兄弟の父)らの豪勢な墓碑が立ち並んでいる。

一般の墓地なら、総高1.5mほどの角柱型・花崗岩製の同じ形の墓碑がズラっと立ち並ぶのだろうが、この寺の境内墓地は様相が異なる。高さ2mをゆうに超えるほどの身の丈の墓碑が立ち並んでいる。流石、町の開発者一族の墓だ。圧倒的なスケール感である。
笠付きの六角柱、五輪塔、尖頭形の板碑、板状笠付きのもの…といった具合に、形も多種多様だ。墓碑の形態を学ぶという点で注目したい場所である。僕にとっては、不謹慎な言い方なのだが「垂涎の場所」なのである。
碑文を読み下し、どれがどの方のお墓なのかを正確に突き止めたいところだが、いかんせんどれも他人様の墓碑。公共のものではない。一族関係者でもなく、ましてや公の文化財調査担当者でもない僕が、墓碑を舐めまわすように眺めたりするのは、どうにも気が引けてならない。観察している最中に、その家系の方が墓参に訪れ、その方とバッタリ遭遇しようならば、なんともバツが悪いではないか。墓荒らしと間違えられるかも知れないし……。
「伊予市主導で文化財保護のため境内墓碑を悉皆調査します」みたいな企画があるんだったら、先陣をきって参加・活動に取り組むんだけどなぁ……。これなら大手を振って、境内調査に取り掛かれるのになぁ……。
栄養寺境内墓地には、宮内家の墓碑群だけでなく、郡中出身、あるいは郡中関連の有名人の墓も多く見られる。
筆頭は、漢学者で松山藩校「明教館」教授を務めた武知五友の墓碑といったところか。とはいっても、「武知五友ってどんな人?」と尋ねられたときにテキパキと答えられる人はそう多くないはずだ。僕なんか、松山藩士・儒学者で、正岡子規の外祖父である大原観山との親交も厚く、正岡子規の書道の師でもあった。正直、このくらいの断片的知識しか持ち合わせていなかった。
武知五友の略歴をざっと整理しておこう。
・文化13年(1816)4月1日、松山藩士武知矩方(朴斎)の長男として生まれる。
・文政11年(1828)松山藩校・明教館(現在松山東高校内)に入学。日下伯巌の指導を受ける。
・天保10年(1839)23歳の時、江戸に出て昌平黌に入学。
・弘化3年(1846)明教館の助教補となる。
・安政2年(1855)明教館助教に任ぜられる。侍読を兼ねる。
・文久2年(1862)明教館教授に任ぜられる。
・廃藩置県後、母と共に高岡村に移る。
・明治5年(1872)伊予郡高柳村(現・松前町上高柳)の荒神庵に移る。「五松庵」と名づけ、開塾し、子弟教育に努めた。
・三津に転寓。
・明治15年(1882)郡中に移り、灘町に私塾を開き(現黒住教会所)子弟を教育した 。
・明治25年(1892)12月、急病に倒れ、翌明治26年1月3日、77歳で没した。
このように、教育に一生涯を捧げた人物だ。従って、彼を師として仰ぐ人はさぞかし多かったに違いない。

武知五友の終の棲家となった灘町。栄養寺に彼の墓があることには納得がいく。とは言っても、近傍に説明書きの立て札があるわけでもないので、寺を訪ねても、彼の墓碑がどこにあるのかは掴みがたいだろう。背丈も大層高いわけではなく、それほど目立つ感じではない。
墓碑は、正面から見ると櫛型の角柱墓碑で、正面に、「旧松山藩臣清風武知先生墓」と刻んでいる。残り三面には、「先生諱方獲字伯慮武知氏清風其號…」から始まる碑文が刻まれている。この碑文は、漢学者で詩人、道後六行舎教授の近藤元弘(南崧)の撰である。
「あれ?武知五友でなく、武知清風?別人じゃ?」と思われる方もおられるかもしれないが、御心配なく。碑文を読んでいただくとお分かりになると思うが、武知五友という人物、諱(いみな)は「方獲」、字(あざな)は「伯慮」、この他に、「清風」「愛山」という号を持つ。これらは全て同一人物を指すのである。
この他、宮内清兵衛の六代目の子孫で、灘町に寺子屋を開き子弟教育に努めた宮内柳庵(桂山、子温)、その弟子で「半窓日記」を残した陶惟貞(聴雨、半窓と号した)、伊予郡中で種油鬢付造業「辻屋」を営み隠居後俳諧に親しんだ俳人・仲田蓼村、旧大洲藩士で廃藩置県後に勃発した大洲若宮騒動の事態収拾に奔走した中村惇らの墓碑などがあるようだ。とはいえ、どれも説明板のようなものが建てられているわけではなく、所在をはっきりと掴めていない。何せ墓のこと、血眼になって在り処を探るようなものではないし、仮にわかったところで、それを紹介するのは憚るべきであろうから、紹介記事はこのくらいに止めておく。
どなたのお墓かよくわからなくても、仏像を塔身にした墓碑などがあると、ついつい目を奪われてしまう。近傍には、無縫塔と呼ばれる形式の墓碑が並んでいるのだから、歴代住職の墓碑の一つなんだろうなと想像する。

それにしても、この仏像、余り目にしない像容だ。お顔立ちから察すれば、おそらくは弥勒菩薩だろう。
弥勒菩薩は、浄土宗大辞典によれば、「釈尊に次いで仏になると約束された菩薩で、五六億七千万年後にこの世に現れて衆生を救済する未来仏」で、浄土に住する菩薩らしい。前回取り上げた「龕部を有する石塔」に収められていたのも弥勒菩薩と思われる。栄養寺は浄土宗寺院だから、きっと弥勒菩薩と深い関わりがあるんだろうなと勝手に納得する。
とはいえ、若干違和感が残る。弥勒菩薩は片足を組んで椅子に座る、いわゆる半跏座で彫られることが多いのに、この像は坐像だからだ。しかも、手に何かを持っておられる。なんとなく宝珠っぽい。だとすれば虚空蔵菩薩かも…。
すぐに答えが導けないのがもどかしい。この辺りがすんなり判別できれば鼻高々、意気揚々と語れるんだがなぁと思ったところで、自らの不勉強のせいなので嘆いても始まらない。もっともっと、日々研鑽に努めるしかない。
しかし、台座のところに刻まれた碑文にしっかり目を通せば、ちゃんとそこに答えがあった。中央に「弥勒菩薩」、その両脇に、「当山十三世…上人」「十四世…上人」と刻まれていた。やっぱり、刻字を読み取ることは大事だ。
本堂の脇に、赤い鳥居が建てられており、その奥に小振りな社殿が構えられている。

「なんで寺に鳥居があるの?」「鳥居は神社にあるもので、普通は寺には鳥居はないんじゃないの?」と思われる方も多いだろうが、鳥居は意外と多くの寺で見掛けるものなのである。
寺に鳥居があるケース、一つは「鎮守」として祀られるケースだ。寺地や建物を災厄から守護するという意味合いで祀られるもので、有名どころの寺院でいえば、東大寺には八幡宮、興福寺には春日明神、比叡山には山王権現が祀られている。伊予市内で言えば、下三谷の正圓寺には熊野権現が祀られているのが確認できよう。
時代を遡れば、神と仏が綯い交ぜになってた神仏混淆・神仏習合の時代もある。「神々は仏・菩薩の権化(ごんげ)である」という本地垂迹(ほんじすいじゃく)の思想から「~権現」という神号の神が数多く生まれたわけで、寺の境内に神様を鎮守としてお祀りすることは、全然不思議なことではないのだ。
とはいえ、栄養寺に祀られているこの神社は、「鎮守」として祀られたものではなさそうだ。
この社の名は「正一位稲荷瘡護(かさもり)大明神」であり、皮膚病に霊験が有ると伝えられている。「『瘡』(かさ)から身を『護』る」と読み下せる。なるほど、その名通りの御利益を与かりそうだ。
由来・来歴は掴めないのだが、現世利益の求める人々のために「勧請」されたと考えるのが自然だろう。当て推量だが、大阪府高槻市に鎮座する笠森稲荷から勧請されたものか。笠森稲荷は、江戸の谷中感応寺西黒門際、谷中大円寺境内、小石川御薬園北など色んなところに勧請され、著名なところも多いので、それらのいずれかを経由して勧請されたのかも知れない。
来歴はともあれ、この社は瘡除けの神として庶民の信仰を集めていたようである。皮膚病に悩み、治癒を祈る時には土の団子を供えて祈り、満願平癒した際には御礼として米の団子に供えたという。
しかし、近年はそのような祈りの姿を目にすることはない。現代社会においては、皮膚病に悩むときは迷わず皮膚科で診てもらって、適切な処置や投薬を施してもらえばよいわけで、祈りを捧げて病気を治すといった非科学的な方法に委ねるのはナンセンスということなのだろうな、きっと。
ナンセンスとは思いつつも困ったときには神頼みしたいと思ってしまう僕。そんな平凡な一庶民のためにも、今後もここに鎮座し、我々を温かく見守り続けていただきたいものである。
栄養寺をベースに5回に亘って「寺にあるもの」「そこから学べること」を取り上げてきた。一つの寺をとってみても、観るべきもの、意味を考えるべきものがふんだんにあることがおわかりいただけたかと思う。
普段は墓参りの時ぐらいしか足を運ばないという人も多いであろう「寺」は、知的好奇心を擽る物が満ち溢れているのである。
皆さんも、お住まいの身近なところにある寺を手始めに、そこにあるものにしっかりと目を向けられてみてはいかがだろうか。
◆お店の詳細◆
店名:こたろう博物館
住所:愛媛県伊予市灘町60-3
電話:(非公開、詳しくは店頭で)
営業時間:10:00~19:00
定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)
◆「伊予市ガイド vol.168 第26回 寺に詣でる-(4)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/88085
◆「伊予市ガイド vol.165 第25回 寺に詣でる-(3)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/87142
◆「伊予市ガイド vol.162 第24回 寺に詣でる-(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/86275
◆「伊予市ガイド vol.159 第23回 寺に詣でる-(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/85177
◆「伊予市ガイド vol.156 第22回 神社に詣でる-(6)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/84157
◆「伊予市ガイド vol.153 第21回 神社に詣でる-(5)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/82984
◆「伊予市ガイド vol.149 第20回 神社に詣でる-(4)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/82190
◆「伊予市ガイド vol.147 第19回 神社に詣でる-(3)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/81199
◆「伊予市ガイド vol.144 第18回 神社に詣でる-(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/80131
◆「伊予市ガイド vol.141 第17回 神社に詣でる-(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/79193
◆「伊予市ガイド vol.138 第16回 石造物を訪ねる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/78092
◆「伊予市ガイド vol.135 第15回 道を訪ねる-(5)~いにしえの道」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/77204
◆「伊予市ガイド vol.132 第14回 道を訪ねる-(4)~その他の道」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/76376
◆「伊予市ガイド vol.129 第13回 道を訪ねる-(3)~市道とか」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/75466
◆「伊予市ガイド vol.126 第12回 道を訪ねる-(2)~そして県道へ」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/74761
◆「伊予市ガイド vol.123 第11回 道を訪ねる-(1)~まずは国道を」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/73821
◆「伊予市ガイド vol.120 第10回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(4)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/72993
◆「伊予市ガイド vol.117 第9回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(3)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71897
◆「伊予市ガイド vol.114 第8回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71175
◆「伊予市ガイド vol.111 第7回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/70419
◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/69458
◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618
◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646
◆「伊予市ガイド vol.99 第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679
◆「伊予市ガイド vol.96 第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665
◆「伊予市ガイド vol.93 第1回 農村風景を眺める」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697
この記事が役に立った!という方はいいね!をお願いします♪
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
松山市清住1-6-21
[ 地域情報サイト ]
松山・伊予・東温・松前・砥部に密着した情報をお届けします!
松山市祝谷東町582-3
[ 縫製業(オリジナル服・小物制作/お直し/リメイク) ]
大切な洋服・小物の制作やお直し、リメイクなど全般に対応!
松山市岩崎町2-12-23 竹村ビル2階
[ ペットホテル/トリミングサロン ]
道後公園近く 和風のホテル・サロンでペットもリラックス
松山市高岡町86-1
[ 自転車専門店(販売・修理) ]
お安く豊富な品揃え! 家族みんなが選べる一台がある自転車店
松山市天山1-2-26
[ 電化サポート(エコキュート・IH調理器)/太陽光発電・蓄電池 ]
省エネでお財布に優しく! エコキュートや蓄電池のことなら当社へ
松山市清住1-6-21
[ システム開発、ホームページ作成、地域ポータル事業 ]
オフィスの悩みをトータルサポート! 業務効率化から情報発信まで