伊予市パーフェクトガイド
ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪
第117回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第9回目です♪
今回は「橋を眺める」の第三弾。
第一弾は、国道・鉄道の橋、第二弾は高速道路の橋ということで、比較的長大な橋を題材として取り上げたが、今回は極めて地味な橋にスポットを当てることにする。
八幡浜や伊方方面に出掛けるとき、双海の海沿いに続く一般国道378号は非常に重宝する道だ。昭和の頃は、道幅も狭い区間があちこちに残っていたし、瞽女トンネル(八幡浜市保内町)も開通しておらず瞽女ヶ峠越えが億劫でたまらなかったが、今や離合の心配も要らず快適に走行できる。
利便が良くなったこともあって、伊予灘の青い海、あるいは夕陽に赤く染まった海を眺めながらのドライブにも気軽に繰り出せる。
色々と恩恵を与えてくれた、そして今も恩恵を受け続けている国道378号なのだが、その道を構成する橋のことなどには今までこれっぽっちも気にとめてこなかった。よくよく考えてみれば失礼なことだ。無礼を詫びるわけじゃないが、車で通過するだけじゃなく、自分の足で歩いて渡ってみたり、周辺からその端正なお姿を拝見させていただくことにしよう。
橋の外見という点では、奇抜なデザイン、派手な装飾のものがあるではなく、極めてノーマルな桁橋を主体にルートが形成されている。比較的新しい道なので、レトロな橋があるわけでもなく、立ち止まって眺め、ほくそ笑むような橋との巡り合いは余り期待しない方が良い。
しかし、アングルをうまいこと切り取れば、それなりに絶景感あふれる風景を見出すことができる。
例えば、伊予市双海町下灘の本村川に架かる本村大橋。周りの余分な部分を切り取れば、何となく「海上に続く橋」という感じに見える。「おぉ!これは山口県下関市の角島っぽいやん!」と言えそうだ。と、こんなこと書くと、角島大橋ファンに怒られるかも知れない。確かに比較の対象としては、この橋は小者過ぎる。まあ、飽くまでも「プチ角島大橋」ってことで。
因みに、この写真をGoogleで画像検索してみると、検索結果の中に角島大橋とか沖縄県うるま市の浜比嘉大橋・宮古島の伊良部大島とかがヒットするのだから、まんざら「盛り過ぎ」でもないような気もするのだが。
視点を「レトロな橋」に切り替えてみよう。
とはいえ、伊予市内で明治・大正時代の橋を見つけるのは至難の業だ。未だ残っているのかも完全には突き止められていない。
今まで私が写真に収めてきた橋の中で最古のものは、中山町出淵にある正和橋だ。伊予市中山町、野中地区公民館のやや下手、栗田川に架かっている。
上親柱に取り付けられた橋銘板には「昭和四年四月架設」と記してある。結構な古さだ。
古いには古いが、これも極めてシンプルな出で立ち。欄干も、7本のコンクリート柱に鉄管を通しただけのもので、美橋という感じではない。但し、親柱はどことなく燈籠のようにも見える、ちょいとおしゃれな形状をしている。
架設の場所から見て、以前は県道223号・野中長沢線を構成する主要な橋であったことだろう。平成初期にバイパス道が開通して以降は、住民以外の人が通行することは殆どないように見える。
鉄筋コンクリート製の単純桁橋のようだが、近年になって橋桁の下部をコンクリート補強している。これからも住民の通行を確保しつつ、昭和初期の橋の姿を後世へと遺し続けてくれるであろうことが期待できる。頼もしい限りだ。
次なるは、伊予市大平、森川に架かる瀧山橋。これも川の両岸に橋桁を掛けただけの単純桁橋だ。
こちらは時代的には下って昭和35年3月に建設されたもの。明治・大正に較べて益々デザインがシンプル(無機質)になってくる時代であるが、この橋は欄干に蒲鉾の断面のような窓を設けているので、橋の姿を眺めてみたい気分にさせてくれる。形状・色合いなどには派手派手しさの欠片も見られない。素朴な面持ちだからこそ、僕の心を捉えるのだ。
これより北側の地域には、それほど古い橋は残ってないだろうなと思っていたのだが、探してみると伊予市上三谷に昭和初期の橋が健在していた。
大谷口橋。昭和11年8月の架設。ということは大谷池の築造前に架けられたものだ。大谷池の完成は昭和20年だから、その築造のための資材運搬を目的に架けられたのだろうか。
讃岐街道とか土佐街道といった主要街道でもなく、また神社仏閣への参詣道でもない、村と村を繋ぐごくありきたりの道のように見える。ただ、ここから砥部町七折へと抜ける道は、砥部で生産された磁器や砥石を郡中港へと運搬する、あるいは郡中港で陸揚げされた物資を砥部へと運搬する路として、昔から頻繁に利用されていたであろうし、それなりの木造橋がここには架かっていたことが推測される。
それはさておき、こちらの橋もご多分に漏れず、単純桁橋であり、欄干も親柱もシンプルな造りとなっている。従って、橋自体をしげしげと観察したくなる人など、殆どいないだろう。
しかし、だからといってここを訪れる価値がないとは言わない。夏にはこの橋の付近に蛍が飛び交うのだ。河床は床止工を施し、とても蛍が棲息する場所のようには思えないのだが、確かに毎年のようにこの橋の周りを蛍が飛び交うのである。
以上、今回は「映える」ことのない、しかも存在・完成年月以外の情報が殆ど見当たらないような橋を中心に巡ってみた。
多様な形態を見せる橋の世界。取るに足らない風景の一部でしかないのかも知れないけれど、私たちの生活に息づくもの、そして暮らしを支えるもの。時には眼差しを向けてみるのも良いんじゃないだろうか。
◆お店の詳細◆
店名:こたろう博物館
住所:愛媛県伊予市灘町60-3
電話:(非公開、詳しくは店頭で)
営業時間:10:00~19:00
定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)
◆「伊予市ガイド vol.111 第7回「橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/70419
◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路]
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/69458
◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる]
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618
◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646
◆「伊予市ガイド vol.99 第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679
◆「伊予市ガイド vol.96 第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665
◆「伊予市ガイド vol.93 第1回 農村風景を眺める」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697
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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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