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まいぷれ五・七・五

「無人駅句会」2022年9月だより

 2022年9月の「無人駅句会」は9名が参加しました。今回は東氏が選句した9句の俳句をご紹介いたします。

(撮影:和夫)

入棺の姉の軽さよつくつくし        曾田幸二

 姉の齢からは世を去るにはまだ早いという思いが滲む。入棺のときに抱えた姉の軽さに、ある戸惑いと驚きを禁じ得なかったのだろう。長患いだったのだろうか、姉の静淑さを窺い知れる。秋の気配を感じさせる法師蝉の鳴き声は、何かに語り掛けているようであり、何かを癒しているようでもある。「つくつくし」にしてやられた。見事に情感溢れる句となった。季語「つくつくし」(秋)。

しなやかな風を編みこむ葡萄棚       日暮屋

 葡萄園でよく見かけるのは桝形の枠を張り巡らせた葡萄棚である。熟す前の葡萄は薄い緑で、且つ葡萄の葉も薄い緑で陽に翳(かざ)した状態になり葉脈が透けて見える。そこへ風がしなやかに葡萄棚を統(す)べるように吹き抜ける。その有り様(よう)を「風を編みこむ」とした措辞は言い得て妙だ。季語「葡萄棚」(秋)。

水打つてしばらく外の人でいる       河野けいこ

 「外」と言う言い方に、妙にノスタルジックを感じてしまった。少年時代、文字より話し言葉として使っていた節がある。この句、夏の焼けた地面に打ち水をして暫くの涼感を味わっているのだ。その時は、一区画ではあるが辺りの景色が一変している。「外の人」には、その情景に満たされている自分を客観視している感がある。そして、そこには自己の内面を含めた時の移ろいをも窺(うかが)い知れる。季語「水打つ」(夏)。

秋立つか韃靼蕎麦を啜るとき        岡本亜蘇

 立秋を過ぎたと言え日中はまだまだ暑い、近年ますます温暖化により気象が乱れていて、夏の延長という感じ。そういった感慨を、作者は「秋立つか」の「か」に乗せたのである。これがこの句のポイント。作者は、初秋の暑さを思い乍(なが)らも韃靼蕎麦を啜っているのである。韃靼蕎麦は普通の蕎麦より苦味があるから、余計に暑さに抗(あらが)っている感がある。この句、韃靼蕎麦も手柄。季語「秋立つ」(秋)。

かなしみをかたちにすれば曼殊沙華     しづか        

 僕の中で、「彼岸花」の表記にはそつのない感情移入であるが、「曼殊沙華」の表記には感情を秘めた直截な感情移入がある。「かなしみ」は切ない感情であり、物理的に形はない、心理的な形として作者は「曼殊沙華」を思ったのだ。「曼殊沙華」は色といい形といい陰を含んだ非凡な花である。情念の愛(かな)しみを掻き立てる句か。季語「曼殊沙華」(秋)。

一歩引くことも大切ねこじゃらし      東隆美

 前へ前へとしゃしゃり出るのではなく、一歩を引いて構える鷹揚(おうよう)さが肝心であると言う事か。人生の平穏は此処にあるな。「ねこじゃらし」は「狗尾草」のことだが、「ねこじゃらし」の方が穂にゆったりとした包容感があり癒される。季語「ねこじゃらし」(秋)。

蹴躓くことの多くて愁思かな        熊本妙子

 「躓く」には「ふと――」とか「何気なく――」とか、無意識の内でのことで、程度としてはそれほど大事に至っていない感じがして、「愁思」にもすんなりと溶け込むように思えるが、何処か「愁思」が上滑りしている感は否めない。「躓く」と「愁思」が意味的に近いからかもしれない。それが「蹴躓く」になると、大事に至っているのだ。思いっきり躓いたから痛いの何の、よろめく事も増えききた。「愁思」とはかけ離れている。だが、痛みも治まると秋の気配をこよなく感じて淑(しと)やかな婦人に戻ってゆくのだ。「蹴躓く」と「愁思」の言葉の対峙が面白い。季語「愁思」」(秋)。

初蝉の聞こえた橋に戻り来る        岡田敬子

 初蝉だから「熊蝉」のような大型ではなく「にいにい蝉」のような小ぶりな蝉だろう。鳴き声もさそれほど喧(やかま)しくなく、せいぜい数匹だったのだろう。橋を渡って森に入ると、蝉の声が聞こえなくなった。やがて引き返すに従い、蝉の声が戻りはじめてきた。もとの橋に帰り立つと、変わらない蝉の声である。満たされる。季語「初蝉」(夏)。

水底の夏が終ってしまいけり        東英幸

 夏から秋へと、水底の変わってゆく様子がそれとなく感じ取れるのだ。水生の植物とか動物だったり、また水の匂いとか透明さだったり、周りの景色や気配も交じり合って晩夏という去り行く時を感じ取っているのである。俳句の表現がシンプルであるがゆえに、いっそうの感受性且つ抒情性が膨らんでゆくのだ。季語「夏終る」(夏)。

(東英幸 記)

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