三つ目の問題は、安保闘争自体つきつめていくと反米・反日の考えにいたります。
この延長上に世界革命が浮かび上がってきます。アメリカはパワー大国であり、中南米はもとよりアジアにおいて民族MOや共産主義運動に加入を深めていた時代、米ソ冷戦の時代でした。
この時「前段階武装蜂起論」が主張され、「国際根拠地論」をとなえていく日本赤軍が形成されました。
私にしても魅力的な誘惑の言葉ではありました。時代の大きな波であり、風でもありました。一度、この論理世界に入れば抜け出すことは難しいのです。
城崎勉は何故最後まで反帝国主義の主張を曲げなかったのか。
闘いで捕まって起訴された場合、もうこれで終いだという考えもあります。
裁判はどうせ最初から有罪だと決めつけているのだから、闘いの正当性をいくら主張しても無罪とはなりません。目的の正当性は個人の自由だが、手段方法がいけないというのです。
しかし、事件に対するすこしの反省をすればまたは反省したふりをすれば裁判官も人間だから減刑します。これも事実です。
ところが、彼は反日・反米・帝国主義の主張を捨てなかったのです。
私も又そうであったし、今もそうであるのですが…
私の1969年10月の逮捕・起訴は城崎や赤軍の連中と比べて、ションベン刑です。私も又完黙を通し、裁判官に対して、非妥協的に自らの正当性を述べ、思想的には屈服してきませんでした。
あらゆる闘いや生きるということは、目的があってのものであり、絶対に守ろうとするものがあります。確信している何かがあるのです。場合によっては命よりも大切なものに違いありません。
それが彼の信です。彼には反日・反米の考えを捨てることはできないことなのです。信念が無くなることは耐えがたいのです。
1970年代の闘いは、多くの逮捕者を出しました。ほとんどがションベン刑でした。訴状を認めてさっさと裁判を済ませ又元の大学に帰っていったものは実に多いのです。偽りであっても裁判官・検事に頭を下げたのです。
統一裁判の要求をけられ、分離にされた20数グループの公判闘争も結局は大したことになりませんでした。
現実論としては裁判に公正さなどは一切ないのです。あるのは、刑法上の罪となりうるかどうかだけ法廷で争われ、集団示威行動はバラバラにされて一人一人に有罪判決が出されてハイ終りです。社会的背景や意図は無視されます。社会的に強者である国家は、若者らの抵抗を許しはしないのです。個人責任原理というものです。
2028年には城崎は満期となって出獄する。その時まであと5年、私も生きて彼に会いたいものです。
刑務所での服役が殉教死とならないことを祈ります。
下世話風に考えれば、法廷でいくらかの反省的なことを述べて、刑を短くしてもらうことをしなければ―もう70代なのだからと思います。
彼の激情は法廷でも火花を散らしたそうです。
やっぱりそうかなあと思う。自分の思想とか信念とかはそれほど重いものです。
まるで江戸期のキリスト教徒が踏み絵(マリア像)を踏まず、死におもむいていったのと似ています。
イエス・キリストが死に向かっていったのも、自ら「神の子」として措定して生き、教えてきた以上、それを完成させる必要があったのではないでしょうか。
仏教界においても、「どのような人であれ念仏一つで救われる」という本願念仏の中に親鸞も空也も一遍も生きていました。
織田の支配に対して、瀬戸内の人々とくに一向宗の人達が二度にもわたって織田信長との海戦を切り拓いていったのは、死を恐れない「ナムアミダブツ・ナムアミダブツ」の信仰心でした。
城崎君も、私と同世代の人です。元気に服役して無事生還してくれることを待っています。
70年当時私は、あなたとは闘いの立場や方法が違っていました。革命論が異なっていました。
けれども、同じ時代に権力と闘った者として、同じ空気を吸って生きていた者として、共有・共感しうる部分もあります。
くり返しになりますが、この裁判は十分な証拠立証もなく事件そのものをフレームアップした政治裁判と云えます。
テロルに恐怖するあまり、ちょっとした反対行動さえも重罰化して長期拘留し一般社会から隔離せんとするものです。政治裁判は思想弾圧でもあります。
一般的に云えば、反米・反帝主義という人間はいくらでもいます。思想を裁かないといいながら、実は裁いているのです。
残念ながら、私はあなたの公判闘争に何もなすことができませんでした。生きて還ってこられることを希っています。人間の一番大事な自己確信である思想を守り抜いた孤軍奮闘の城崎戦士、死なずに生きてふたたび我々の前にあらわれてくれることを願います。まさに信念の人です。
■お知らせ■
2022年10月、実店舗復活オープン!店売り始めます!
毎週月〜金の12:00〜17:00に写楽堂安城寺店にて店売りを始めます。
詳しくはこちらからご覧ください↓
古本実店舗復活オープン!店売り始めます!