前文
〈はじめに〉
私によくする質問は次のようなものである。
①貧乏学生がなぜ70年安保闘争の突撃隊になったのか
②学生運動をして就職もできんかった人間がそれでチリ紙交換をしてどうして稼げたのか、その日暮らしになってしまわなかったのか
③チリ紙交換をしていた人間が古本屋を始めたのは何故か、なんでそんなことができたのか
④四国の片田舎松山で古本屋をしていた者が突然香港くんだりまで行って日本書店をつくった そんな力がどこから出てきたのか
この4つの問いにいくぶん答えているのがこの本です。
学生運動といっても2年ばかり、岡山県倉敷市での反戦、反合そして日本原基地撤去斗争
、7年ほどでありました。
この10年余りは、たくさんの支援者からのカンパや自力のアルバイトで生活をしながらの活動でありました。
大学を追われ、岡山の地で安心の地を得たのも束の間、とうとう四国の片隅松山まで来てしまいました。
徳島-香川-岡山-愛媛県へ流れていきましたが、どこにもカナン(乳と蜜のあふれる神の約束の地)の地は見つかりませんでした。
その後故紙回収業をやり古書店経営に苦労を重ねてきました。
次から次へと起きてくる経営上の困難を解決していくことは並大抵ではありませんでした。
中小企業の商業・流通業の分野で45年間も古本業に取り組んでこれたのは奇跡に近いと思います。
一方私とは違って、とりあえず国家権力に従ってきた人達はその後どうなったのでしょうか。カナンの地に到達したのでしょうか。
豊かな老後の生活にたどり着いたのでしょうか。
戦後生まれの団塊の世代はよく勉強し働いて、国家や社会に尽くしてきたと思いますが、相応のものが得られたのでしょうか。
社会の中心で頑張ってきた人達が報われないとすれば、日本の戦後、この70年間をリードしてきた政治家、行政府が誤っていたことになります。
非政治の世界であるとあがめられてきた東京オリンピックの汚職事件は官財の癒着を示してしています。
行政サービスのあらゆるところにこのようなワイロの匂いがする。民主主義社会の最大の敵はワイロです。
こんな社会では、日本はチープな国だと云われるのも道理にかなっていると思います。
日本社会は安全で住みやすい国ではなくなりつつあります。
25年前には香港の人々にとって日本は安住の地-カナンでした。
それが今では危険でもろもろの人権が認められていない国とみなされています。
こんな格差社会では、日本の若者は可哀想です。日本の若者は希望を持てなくなっています。
AI産業は別としてどの業界も生活するには厳しすぎる状況になっています。
今の日本の若者はいかに生きるべきかということで悩んでいます。
この本がそうした設問に答えていくことに何らかの一助になればと願います。
凡庸で愚鈍な人間ほど一つのことに熱狂的になります。私にはそれが反戦活動であり、古本屋であっただけのことです。
〈本文〉
昨年8月からほぼ6ヶ月をかけて自叙伝らしきものをNetに書いてきた。
一人回顧し、自問自答してきた。それをまとめてみた。
自己の記憶を頼りとして、表現してきたつもりである。その記憶というものが後からの知恵で加工されているのに気付いている。又、自分の都合の悪いものは消されていることがわかった。
それにしても社会が大きく変化している。50年前のことを再現するのは難しい。1970~80年代の社会背景や時代の空気を表現することは私個人の力量から云ってできないことである。
したがってこの本は自叙伝ではなくものがたりである。私が生きてきた過去、事実における表現ではあるが、現在において付け加えられた意味・付与がある。差別や貧困に対して同情しそこからの解放に人生をかけて闘ってきた人たちがいる。
私はこの本で少しは私の思想の根源に迫っていけたと思う。
この作業はその緒についたばかりである。ある人は、このものがたりに共感を抱くであろうが、他の人達は笑ったり、その欠点を見つけるであろう。
この本にはたぶんに誤りもあり、私の一人合点の思い込みの箇所もある。この50年間の社会学の進歩も著しいものがある。友人・諸氏からのご批判もあろう。
このものがたりの根底に流れている思想や行動にいくぶんかの共通感情があるだろうか。憐れみと共感を得られればこれを書いた労苦がむくわれるというわけである。
この本の構成について;
時系列的には若干の前後がありますが、大別すると次の4部構成となります。
第1部 生い立ちからベトナム反戦・大学闘争と反戦・反合・反ファッショの闘い
1960~1980年(於 徳島・高松・岡山)
―第1章~6章―
第2部 チリ紙交換から古本屋写楽堂オープン
1978~1983~2020年(於 松山)
―第7章~10章―
第3部 香港店オープンと2度目の投獄(日本ポルノ王事件)
1994~1998年~現在まで(於 香港)
―第11章~15章―
第4部 まんが喫茶シャーロックからNet販売
1998~2004年・2010年~現在まで(於 松山)
―第16章~17章―
献歌 2首
・わが目指すカナンは何処岡超えて行く 一本の道ははるけし
・岡に立ちふりさけ見れば一生かけ 求めし本志の野火はまだ燃ゆ
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