古本屋さんによってチリ交への対応は違ってきます。なんとか彼らの役に立ってあげようとしましたが、何もできません。他人の生き方を変えることはできません。何人かのケースをもって、彼らの鎮魂歌にしたいと思います。
●安野さん(仮名)のケース
ちょくちょく本を持ってきてくれました。シニカルな一人主義の人で口数も少なかった。やせた人でした。
ある時新聞紙上で不審死が知らされました。身内の方が連絡が取れないのでかけつけて見つけたそうです。
これは餓死だったのではないか。5~6年間のチリ紙交換人生でありました。
●今田さん(仮名)のケース
ときどき思いがけない貴重な本を持ってきてくれた人です。離婚歴あり。
この人は、今でいう「良い仕事ですね(なんでも鑑定団のセリフ)」を地で行っていました。
彼は、他のチリ交が回らない田舎に行っていました。旧家が残っていて、そこにはお宝ものがよくあったのです。
土蔵の中から出してきたような古書が見つかる場合があります。
この場合、私ができるだけ高く買ってあげることが彼のインセンティブになります。
いま私が持っている映画ポスターも彼が発掘したものです。
彼にとっては、金が一時的に入ってきても、次に何をやるかの目標がありません。それで3~5万円くらいになったときは、そのお金が無くなるまでバーねえちゃん、赤ちょうちんに行きます。そういうことがつづくとお店の方も信用してしまいツケで飲ませます。
柳や枡の下にはそうはドジョウがいません。
酒とカラオケ・パチンコが好きな人でした。
スナックのママさんにせっつかれてタクシーで私の自宅まで来て金を貸してくれと頼まれたこともあります。
この今田さんもやがてガンにおかされてしまいました。
何度かの入退院の後、私にも連絡が来ました。この時今井さんの面倒を見ている仲間がいました。
それで私と三人でお別れ会として焼肉屋に行きました。
その場所で今井さんの面倒を見ている仲間があれこれと世話をしているのを聞いて「足しにしてくれ」と言って×万円を見舞金として渡しました。
今井さんが見ていないと思ってかくして渡したのですが、さとられました。
翌日電話がかかってきて「あの金は俺にくれたのだろう」と云うのです。
二人のバトルがはじまっていたのです。今井さんはその後1ヶ月くらいで亡くなりました。
●伊野さん(仮名)のケース
病院に入っているのですが、日常品、テレビの視聴カードが買えないので何とかしてくれとせがまれました。
彼も長い間チリ交をしましたが、病院で亡くなりました。
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