伊予市パーフェクトガイド
ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪
第251回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの
『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』総括の回です。
お楽しみください!
2022年5月から約4年半、「こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』」と称して、伊予市内の様々な事物に目を向けてきた。ここで、今までの内容を総括しておこう。
このシリーズは、まず手始めに、「農村風景を眺める」と題して伊予市内の棚田の風景を追い掛けた。これには理由がある。僕は西予市の零細農家に生まれ育った。山と田畑しかなく、商業施設も幹線道路さえもない辺鄙なところだ。刺激も少なく、近代的なものに憧れが強かった僕は、中学卒業後は実家を離れて県外の学校に進学し、就職後は松山市に居を構えた。故郷を離れて半世紀となった今、狭隘な渓間に田畑を積み重ねた風景は、田植えや稲刈り、田畑の草取りなど幼き頃の思い出も甦り、郷愁を誘うものになっているのだ。
今や「棚田」・「段畑」は、重要文化的景観に選定される所もあり、「見るべき価値がある風景」として認知されてきている。しかし、単にそのスケールの壮大さや景観の美しさだけに目を奪われてはいけない。そこにそのような形で残っているのは、先人たちの苦労や営みが連綿として継がれてきたからこそであり、本当はそこに目を向けなければならない。
見るべきポイントの一つが水だ。田に張る水、畑への散水用の水はどこから来ているのか。水は農家にとって重要なもの。適量の水が確保できなければ死活問題だ。往古には水利権を巡って争いが起こったり、旱天になれば雨乞いも行った。
ということで水の供給源は気になるところ。伊予市の場合、用水施設の最たるものは「ため池」だ。伊予市は「ため池密度」が極めて高い地域で、その一つ一つを巡っていてはキリがない。そこで「ため池100選」に選出されていて、景勝地としても名高い大谷池に目を向ける。この大谷池、池とはいうが、構造的にはダムだ。といっても大谷池に流れ込むのは数本の小沢しかない。どこから水が来ているのか。面河ダムから遠路遥々導水されている、これが答えだった。
取水口としての河川も気になる。普段は気にとめない小川も、河口から上流へと遡行しながら観察してみると、色々な発見があって面白い。川沿いの植生や野の花の花期が掴めたり、河川端・上流端といった管理標識があることに気付いたりと、興味は広がっていく。
観光客が訪れるような川は、一般的には紅葉の綺麗な場所、滝・淵といった幽玄な見所を要する川、いわゆる「渓谷」だ。伊予市の場合、滝と呼べるものは皆無に等しい。本稿では、藤の郷川の「鮎返滝」を紹介したのだが、実はこれは反則技だった。この滝は、行政区域では内子町に属している。藤の郷川は中山町永木地区を源流としていることもあって強引に伊予市扱いにしてしまった。
河川を探っていくと、川を堰き止めるものにも興味が湧いてくる。伊予市には大谷池・三秋大池のようなため池以外に灌水用のダムと呼べるものはない。だが砂防ダムならある。下流側から眺めるだけなら、それなりにスケール感もあり、景観としてはまずまずだ。
川も見方を変えれば、水が通るための「道」と見なすことができる。ということで、お次は「道」をテーマに様々なものを見聞する。まずは隧道・トンネルを眺める。そして橋を眺める。伊予市内では、単純桁橋はもちろんのこと、トラス橋、ラーメン橋、アーチ橋なども見られるし、橋の大きさに拘らなければ、農業用水用の水路橋、ただ水道管を渡す水路橋といったものも見られる。橋銘板も面白い。地図にも乗らないような小さな地名や河川名を探るのに役立つ。
国道、県道、市町村道と、道を管理する自治体によって区分される道も、管理標識類に目をやれば、交差点名・区間名などが記されており、地名を追い掛けるための貴重な教材になる。
ただ、市道、林道、農道となれば、圧倒的に数が膨らみ、全容の把握もままならないし、何よりその名前を示すような標識類が皆無に近い。「郡中北通り」「しお風通り」といった愛称がつけられた一部の市道を掘り下げるのがやっとといった感じである。下手に手をつけると沼に大ハマリになりそうだ。
私道の場合は、個人所有なので散策時は要注意。迂闊に足を踏み入れると、不法侵入だと訴えられかねない。見学・撮影にあたっては所有者の許可を忘れぬよう。これは道に限ったことではない。建物、畑の中の祠、墓などを巡る際は要注意だ。極力「公共のもの」を中心に見聞するのが無難であろう。
その点、鉄道なんかは安心だ。伊予市は、JRも伊予鉄も通っているので見どころが多いように思う。特に、伊予鉄は郡中港駅が郡中線の「始点」・「終点」であり、「始点」・「終点」ならではのものが見られる点が面白い。
道を巡る際は、時間軸も考慮に入れると良かろう。今歩いている細道が、昔は主要往還だったのかもしれないと考えると情緒も溢れてくる。昔の風景を思い起こす縁となるのが石造物。旧金毘羅参詣道沿いには、道標・常夜灯など、文字情報が刻まれたものが散在していて、僕なんかはたまらなく興味をそそられる。

(写真:永田三島神社(中山町出淵))
石造物を眺めるなら、神社仏閣に行くに限る。常夜燈、注連石、幟立石、一字一石塔、祠、手水鉢、香炉……。膨大な種類・数の石造物が境内や参道に存在する。石造物の名前を知りたい、それらの構成要素・各部位の名称も知りたい。どんな意味合いで設けられているか、その理由も知りたい。知りたいことだらけのワンダーランドである。
建造物を眺めるのも良い。境内に祀られている末社の来歴を調べるのも面白い。見るべきものがふんだんにある。墓なんかも、墓碑に多くの文字が刻まれていて、偉人の足跡を辿るための貴重な情報源となる。
ところが神社仏閣・墓地は、本来は祈願・供養の場所。だから写真を撮ったり、しげしげと眺めるのは慎むべきことであることは承知している。しかし、純粋な「学び」が目的だから神様も仏様もきっと寛大な気持ちで見守って下さってることだろうと自分に言い聞かせる。他の参拝者や氏子・檀家の方も、同様に暖かい目で見て下さればありがたいのだが……。
このシリーズでは、文化財調査に携わった正一位稲荷神社(伊予市稲荷)や高岸三島神社(双海町)、厳島神社(中山町)、伊予岡八幡神社(伊予市下吾川)、栄養寺(伊予市灘町)などを紹介したが、市内にはそれ以外にもたくさんの神社仏閣が存在する。隈なく足を運び、事物を一点一点調べ尽くしているのだが、何年経っても調べ足りないことが山ほど残っている。今後も時間をかけて取り組んでいきたいものだ。
再び「道」を訪ねる旅に戻り、路面に存在するものということでマンホールに目を向ける。マンホール蓋には市町村の花を彫り込むこと多いが、伊予市の場合はツツジをあしらっている。ここから、市の花の制定の経緯を他の市町村も含めて調べていき、平成の大合併以前の愛媛県下の70市町村を網羅してみたが、これには少々骨が折れた。
市の花のことがわかれば、今度は市の木「メタセコイア」だ。これは、森の大谷海岸に伝わる「扶桑木の伝説」に由来している。メタセコイヤといわれてもピンと来ない人も多いだろうからと、伊予市内でメタセコイアの実物を観察できる場所、植生状況を網羅してみたりもした。
どうせなら、他人に話して自慢できそうな木、いわゆる銘木・巨木の類も見物しておきたい。これらの実物を眺め、「大きい」「パワーを貰えそう」といった漠然とした印象を抱くだけでも全然構わないとは思うのだが、どうせなら有名無名・大小・樹齢に拘らず、様々な木の樹種を判別できる能力を養いたいと欲が出る。まずは、天然記念物に指定されるものが取っ掛かりとなる。このシリーズではオガタマノキ(旧双海町)、アカメヤナギ(旧中山町)、ナギ(旧伊予市)などを取り上げた。更に知見を深めるならば、えひめ森林公園を訪れると良かろう。樹齢百年を超えるような巨木を始め、多種多様な植物たちの実物を目にすることができるし、ガイド類も充実している。キノコ・苔・地衣類といったマイナーなものも含めて自然学習ができるのだから。
植物といえば、群集美も捨て置くわけにはいかない。春先は谷上山、称名寺をはじめ、市内の随所で桜が楽しめる。単純に桜の花の繚乱ぶりを眺めるのも良いが、花びら、蕊などなどの細部を観察するのも良いものだ。水鏡に映る桜、取り合わせも楽しみの一つとなろう。
「花見」を桜だけで済ませてはいけない。菜の花・水仙などを求めて国道378号沿いのメジャースポットに足を運ぶのも良さそうだ。だが、雑草類にも目をやりたい。ということで、秦皇山周辺で花を訪ね歩く旅を紹介した。花の命は短くて…。機会を逃せば一年先まで見れないことになってしまう。花暦でも作って、しっかりスケジュールを練り、花期を逃さないようにしたいものだ。

(写真:五色浜の海岸を埋め尽くすオオキンケイギク群生)
本シリーズでは紹介しなかったが、厄介ものの特定外来種の植物も数が揃えば絶景へと変わる。上の写真は、五色浜の海岸のオオキンケイギク群生だ。浜辺を埋め尽くす黄色い花の絨毯は圧巻の風景だ。繁殖力が旺盛で、放っておくと在来種を食いつぶすので本当は抜去しなければならないのだが、これだけ美しいと少々勿体なさを感じてしまう。このような風景も捨てがたい。
自然観察するならば、やっぱり山へと足を延ばしたい。山歩きは体力増進にも効果的である。伊予市内には、ガイドブックに載るような山はさほど多くはないが、それでも谷上山、金松山、白滝山・権現山、障子山をはじめ、登りがいのある山はたくさんある。
山と云えば三角点。僕は、松山近郊の無名峰にも度々足を運んだのだが、一般的な登山とは少々訳が違う。登山路がしっかりしていないし、三角点に至るまでのルートのガイドはほとんど存在しない。地形図などでルート設定するが、いざ歩いてみると分岐路等の目印がない。手入れが行き届いておらず、藪に阻まれることもしきりである。散々苦労を重ねて三角点に到達しても、木々が生い茂っていて展望が利かず、絶景には巡り合えないなんてことも少なくない。三角点を求めるだけなら、なにも山間部に拘らなくても良い。三角点は街の中にだってある。
どうせなら垂直方向の突先だけでなく、水平方向の突先、そう、海に突き出した場所にも足を延ばしてはどうだろう。ということで、伊予港界隈を歩いてみる。登山となると登山口までそれなりに車を走らせなければならないが、このような旅なら公共機関を用いて短時間で容易に出発点に向かえる、歩く途中で厭になったら中断したりコース変更したりと、臨機応変な対応もできる。
海の中にぽっかりと浮かぶ島々を眺めながら歩くのも爽快だ。夕陽が西へと落ちる黄昏時の風景の美しさは云うまでもないが、目に映る島々をただ眺めるだけでなく、その名前や位置関係を知ると更に魅力は増すはずだ。
また、伊予灘の風景だけではなく、内港にも目を向けたい。

(写真:伊予港内港)
この写真は、僕のお気に入りの一枚なのだが、時間や天候状態によっては、このような見事な絵画的風景に巡り合えるのである。
風景だけでなく、五色浜公園内に存在する様々なモノにも興味を持ってもらいたい。彩浜館、さざえ堀といった建造物や、数多の記念碑、文学碑にしっかりと目配せすれば、地域の歴史や文化を大いに学べるのである。
有形のものだけでなく、伝説などにも目を向けてもらいたい。ここには「五色姫の伝説」なるものが伝わっている。
この流れで、伊予市内に伝わる「源平伝説」、特に、鎌倉神社の祭神である源範頼をターゲットに、伊予への来訪伝説や範頼の墓、その周辺にある矢竹・松、そして、彼の愛馬であった虎月毛とその養育者である九門修理の痕跡を追い掛けてみた。更には、那須与一や山吹御前の伝承について取り上げてみた。
この他にも市内には多くの伝説が語られている。それがどこまでが真実か定かではないが、これも心底突き詰めていけば、歴史・文化的な知見を深めるのに役立つ。映画やアニメの聖地巡礼みたいなのも良いけれども、これらは視聴した人々との共有・共感が主目的。もっとマイナーな部分を攻め、自らの知的好奇心を揺さぶる旅というのもお試しあれ。
「こたろう博物館」を伊予市灘町に開設して、気付けば早いもので6年半の歳月が流れてしまった。万年閑古鳥が鳴くような始末で、経営的にはまったく採算がとれない状況ながら、それでも細々と博物館の営業を続けている。
時折、県外から訪れる奇特な人が来館し、「伊予市のどこがおすすめですか?」なんて尋ねてくることがある。この質問には正直困ってしまう。その人がどんなものに興味があるのかを知らずして、「ここに行ってみてはいかがですか」なんていい加減な回答はできない。観光パンフレットに出てくるスポットをお伝えするのが無難だろうが、「なんだ、この人大したことをご存知ないのね」などと思われるのも癪に障る。かといってマイナーなスポットをお伝えして、「お薦めして貰ったけど別にどうってことない場所だった」とがっかりさせるのも不本意だ。こんな思いが行ったり来たりしてしまう。
言葉は悪いが、伊予市は大勢の観光客が喜んで詰めかけるような観光地ではない。こんなことを言うと「下灘駅があるじゃないか」などと異論を唱える人も出てくるだろうが、飽くまでも僕の主観である。といっても、「見るべきものがない」、「訪れるべき価値がない」なんて言わない。僕なんかは、この町に存在するモノの全てが面白いと思っているのだから。日常生活の中で見掛ける色んなモノは、知っているようで実は詳しくを知らない。単独で存在するように見えて実に何らかの形で密接に絡み合っている。僕は、それらを一つ一つ解きほぐすことに至福を感じているのだ。
この意味では、市内には観光資源が腐るほどある。だがその一つ一つは、決して集客能力を有する優等生じゃない、どこにでも転がっている石ころみたいなものだろう。しかし、それは磨き続ければ輝きを放つかもしれない。ただ「見る」だけじゃなく、「知る」こと、これが重要だ。「知る」ことは、原石を磨くことに他ならない。最初は「存在を知る」だけで良い。しかし、そこで足を止めず、「それが存在することの意味」「他の物事との関わり」を知ることに努めよう。文字情報が刻まれていれば、徹底的にその文字を掘り起こそう。「知る」ことで、そのモノを新たな視点で見直すきっかけになり、次の「見る」に繋がるはずだ。「見る」「知る」を際限なく繰り返す。それができる場所が「旅先」でいいじゃないか。気軽に足を運べる身近な場所「地元」というものをもっともっと見直していこうじゃないか。
ということで、独り善がりで長ったらしい文を今までずっと書き連ねてきたが、一旦ここでペンを置くことにする。機会あれば、またどっかで是非。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

伊予市ガイド vol.251【こたろうの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』】 第54回:総括

伊予市ガイド vol.250 松山生まれ、伊予市民のさっちゃんからの伊予市の紹介♪「絵本作家 ひむかい あきこ さん」

伊予市ガイド vol.249【伊予うろうろ記】第17回 2026年9月号
松山市谷町甲158-6
[ 洋菓子(ケーキ、バームクーヘン、焼き菓子等)・ドライフラワー ]
創業30年以上! すべての人に幸せな魔法をかけるケーキ店
松山市水泥町1263-1
[ ドライブイン・食堂/ドッグラン/ストライダーコース ]
BBQも定食も!マテラ豚が堪能できる自然公園型ドライブイン
松山市湊町4丁目11-6 スタービル2階
[ カジュアルイタリアン・バー ]
コスパ抜群のカジュアルイタリアン♪ 少人数からパーティーまで◎
松山市束本1-8-7
[ 焼肉店 ]
炭火で楽しむ焼肉を、お腹いっぱい! 地元に根差した焼肉屋
松山市大街道2-5-7
[ 居酒屋 ]
“魚の美味しさで選ばれる”居酒屋! 地酒飲み放題コースも◎
松山市三番町7-7-1 村上ビル1階
[ カフェ&バー(催眠術・マジック・占い) ]
催眠術とマジックを楽しめる、愛媛でも珍しいカフェ&バー