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まいぷれ五・七・五

「無人駅句会」9月だより

(撮影:和夫)

 9月の「無人駅句会」は9名が参加しました。今回は東氏が選句した8句の俳句をご紹介いたします。

雨上がりの土曜日明日から九月  曽田幸二

 坦担とした報告のような一文に見えるが、それが中中、如何して興味深かった。「雨上がり」「土曜日」「明日」、という言葉が「九月」という言葉と絶妙に絡み合ったのだ。九月の持つ初秋の爽やかな空気の中に、この句は浸っているのだ。平凡な言葉たちのオシャレ感がいっぱい。

鳥渡るパセリを噛めばほろ苦し  岡本亜蘇

 この季語「鳥渡る」は、概ね秋に飛来した渡り鳥である冬鳥を指すが、この句では燕のように、秋に南へ帰る渡り鳥(夏鳥と言う)だと解釈した。パセリの持つ薬草っぽい芳香と食感が秋のもの悲しさを引き出し、下五の「ほろ苦し」で一気に情感を吐き出して、叙情性を深めた。

運動靴取り込み後の大夕立(おおゆだち)  和夫

 子供達の運動靴を何足も洗って干したのだ。この猛暑であれば半日もあれば充分乾く。足の匂いもすっかり取れた。その靴達を取り込んだ瞬間、叩き付けるような大粒の雨だ。間一髪間に合った。夕立の後のちょっとした清涼感はいい。しかし、この句、お母さんの慌てぶりが思われて可笑しい。

二百十日キャベツ刻んでいる息子  東英幸

 二百十日は二百二十日と並んで厄日だ。立春から数えて二百十日目をいう。台風の最中、出掛けるでも無し、成人した息子がちょっとしたレシピに挑んでいるのだ。キャベツを刻む音が台風の中のいい生活感のリズムを生む。

秋夕焼見知らぬ町へ川は抜け  岡本哲典

 秋の入り日は早い、「釣瓶落とし」と言われる所以である。あっという間に暮れて行く。高台からの展望だろうか、一本の川が見える。その川の行く先は見知らぬ町、町の灯りが点在しはじめた。少しファンタスチックな世界。

帰省した友と会う日の夏水仙  東隆美

 「夏水仙」はヒガンバナ科の多年草、とある。久し振りに帰省した懐かしい友との団欒は、色色と過ぎた時間の思いをはき出す。飲み物の氷がゆっくりと溶けてきた。夏水仙の優しい語感が心置きなく流れる時間を満たす。

新涼や家族写真に薄埃  熊本妙子

 熱暑の中では気にもとめなかった家族写真。新涼となった今、生活感にもほっとした気持ちが感じられ、写真立ての中の家族写真を眺めるゆとりも生まれた。この夏を耐えきった家族写真にはほんのり薄埃。その薄埃が秋の日差しに浮いている。

法師蝉残り少ないページ置く  岡田敬子

 「蝉」は夏の季語だが、「法師蝉」は秋の季語です。「つくつくぼうし」とか「つくつくし」という言い方もします。あの鳴き声の限りないせつなさは、夏の終わりを暗示します。暑さも少し緩んできた午後、読み疲れたのか、あと少しで読み終える本に栞を挟んでテータイム。空を仰ぐと秋の気配の雲が浮かぶ。何となく暑さから解放された気分である。

 

(東英幸 記)

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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